自転車うんちく系

名作フレーム「Surly Pacer」。廃盤となった今でも愛され続ける理由とは?

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。今回は、僕が心の底から愛してやまないフレーム、その名もSurly Pacer(サーリー ペイサー)について深く掘り下げてみたいと思います。

2017年に惜しまれつつも生産が終了したこのフレームは、今もなお多くの自転車愛好家から「伝説」として語り継がれています。しかし、なぜPacerはこれほどまでに熱狂的なファンを持つのでしょうか?

今回は、Pacerというフレームが持つ哲学、その裏側に秘められたストーリー、そしてその魅力の核心を、僕なりに解説していきます。


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Pacerに宿るサーリーの哲学

まず、Pacerを語る上で欠かせないのが、Surlyというブランドの根底にある哲学です。

軽量化やエアロダイナミクスを競う現代のロードバイクとは一線を画し、Surlyは一貫して**「タフで、シンプルで、実用的」**な自転車づくりを追求してきました。Pacerは、まさにその哲学をロードバイクの形に落とし込んだ、Surlyの信念が詰まったフレームなんです。

ヒストリーとバックストーリー

Pacerが登場したのは、カーボンフレームがロードバイクの主流になりつつあった2000年代初頭。多くのメーカーがグラム単位の軽量化に心血を注ぐ中、Surlyは「本当に自転車を楽しむためのフレームとは何か?」という問いを立てました。

そして生まれたのが、このPacerです。華美な装飾は一切なく、ただひたすらに**「長く、安心して乗れること」**を追求した、質実剛健なクロモリフレーム。

メーカーは、このフレームに「ロードレースの勝利を目指すフレーム」ではなく、**「日々をタフに駆け抜けるための相棒」**というコンセプトを込めていました。

雨の日も風の日も、通勤や買い物、週末のロングライドから軽いツーリングまで、あらゆる場面でライダーを支える。Pacerは、速さよりも、乗り心地の良さや信頼性、そして何よりも「自転車を走らせる喜び」を大切にするライダーのために作られたのです。


Pacerの乗り味を形作るジオメトリとスペック

次に、Pacerの「乗り心地」や「使い勝手」を決定づけている、具体的なジオメトリとスペックを見ていきましょう。

Pacerのジオメトリ表

サイズトップチューブ長 (水平)シートチューブ長ヘッドアングルシートアングルチェーンステー長BBドロップ
5053.0cm50.0cm72.5°74.0°42.5cm7.2cm
5253.5cm52.0cm72.5°73.5°42.5cm7.2cm
5454.5cm54.0cm73.0°73.0°42.5cm7.2cm
5656.5cm56.0cm73.0°73.0°42.5cm7.2cm
5858.0cm58.0cm73.0°72.5°42.5cm7.2cm
6059.0cm60.0cm73.0°72.5°42.5cm7.2cm
6260.5cm62.0cm73.0°72.5°42.5cm7.2cm

ジオメトリから読み解くPacerのキャラクター

  • チェーンステーの長さ(42.5cm): この表を見て、「あれ?全サイズでチェーンステーの長さが同じやん」って思いましたか?そうなんです。これがPacerの最もユニークな特徴の一つ。一般的なロードバイクがサイズごとにチェーンステーを調整するのに対し、Pacerは全サイズで42.5cmに統一しています。これは、どんな身長のライダーでも、Pacer特有の**「優れた直進安定性」「柔らかな乗り心地」**を体験できるようにという、Surlyの設計思想の表れです。急な挙動をすることなく、路面のギャップも穏やかにいなしてくれるので、長距離ライドや荷物を積んだツーリングでも安心して走れます。
  • ヘッドチューブアングル(72.5°〜73.0°): 一般的なロードバイクに比べてやや寝かせ気味のヘッドアングルも、Pacerの安定性を高める要因です。これにより、まるで地面を這うような安心感のあるハンドリングを実現しています。
  • BBドロップ(72mm): BB位置が低く設定されているため、重心が安定し、カーブを曲がる時も腰を据えてどっしり走ることができます。これもまた、Pacerの「安定志向」な乗り味を象徴する特徴です。

フレームのスペックに言及する

  • フレーム素材:Surly 4130 CroMoly Surlyのアイデンティティとも言えるクロモリ素材。タフで耐久性が高いのはもちろん、しなやかで路面からの振動を吸収してくれるため、長時間のライドでも疲れにくい乗り心地を提供します。
  • エンド幅:130mm 一般的なロードバイクと同じ規格なので、現在市場に出回っている多くのホイールやハブが使えます。パーツ選びに困ることが少ないのもPacerの魅力です。
  • BB規格:68mm幅のJIS(BSA)ねじ切り この規格は汎用性が高く、メンテナンスが非常に容易です。異音トラブルも少なく、自分でBB交換を試すこともできるので、DIY派のライダーには嬉しいポイントです。
  • タイヤクリアランス:700c x 32mm(フェンダーなし) 一般的なロードバイクが25c〜28cなのに対し、Pacerは32cという太めのタイヤを履かせることができます。これにより、ちょっとした荒れた道やグラベルでも臆することなく突っ込んでいける、高い汎用性を備えています。

ヒロヤス的おすすめビルド:Pacerを現代に蘇らせる

もし僕が今、Pacerをゼロからビルドするなら、こんなコンセプトでパーツを選びます。

「クラシックな佇まいの中に、現代的な信頼性を込める」

コンポーネント

  • カンパニョーロ Veloce シマノの最新コンポも良いですが、Pacerのクラシックな雰囲気には、カンパニョーロの無骨で美しいデザインが最高にマッチします。シルバーのコンポで統一すれば、まるでヴィンテージバイクのような佇まいになります。

ホイール

  • リム:H+SON TB14(シルバー) クラシックな箱リム形状で、Pacerの雰囲気にぴったり。
  • ハブ:Paul Component Engineering Hub(High Flange) 大胆な削り出しが美しいハブは、Pacerのシンプルさを引き立ててくれます。

クランク

  • White Industries VBC クランク 美しい削り出しのクランクは、もはやアートピースです。クラシックなPacerのフレームに、モダンな工芸品を組み合わせることで、唯一無二の存在感が生まれます。BBはWhite IndustriesのM30 BBを使用します。

その他

  • ハンドル・ステム・シートポストNITTO 日本の老舗ブランド、日東の美しいパーツたちは、Pacerのクロモリフレームとの相性も完璧です。
  • タイヤPanaracer GravelKing SS(32c) Pacerの持つタイヤクリアランスを最大限に活かし、現代的なグラベルロードの乗り味も楽しむ。舗装路の走行性能も高く、ライドの可能性を広げてくれます。

まとめ:Pacerは生き方そのもの

Pacerは、決して最速のバイクではありません。しかし、一度乗ればその安定感と、どこまでも走りたくなるような心地よさに、誰もが虜になってしまうでしょう。

それは、まるで人生のようではないでしょうか。速さだけを求めるのではなく、一歩ずつ、しっかりと地面を踏みしめて、自分だけの道をゆく。Pacerというフレームは、そうした生き方を自転車に投影した、Surlyからのメッセージだったのかもしれません。

惜しくも生産は終了してしまいましたが、今もどこかで誰かの相棒として、日々をタフに駆け抜けているPacerたちがいるはずです。

もしどこかでPacerを見かけたら、ぜひそのオーナーに話しかけてみてください。きっと、Pacerにまつわる熱い物語を聞かせてくれるはずです。

それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!

【取扱店舗情報】 Surly(サーリー)の自転車に出会える日本のショップ

Surlyの自転車は、独自のスタイルと哲学を持つショップで取り扱われていることが多いです。ここでは、日本全国の代表的なSurly取扱店をいくつかご紹介します。

関東
中部
関西
中国
四国
九州
北海道
沖縄
  • 店舗名: Blue Lug (ブルーラグ)
  • 地域: 東京都
  • 自転車を愛する人々が集まる、東京を代表するカスタムバイクショップ。Surlyをはじめとする個性的なブランドを多数扱い、独自のセンスで組み上げられた自転車は多くのファンを魅了しています。パーツの品揃えも豊富で、気軽に相談できる雰囲気も魅力です。
  • 公式ホームページ: https://bluelug.com/
  • 店舗名: Circles (サークルズ)
  • 地域: 愛知県
  • 名古屋を拠点に、自転車文化の発信地として知られるショップ。Surlyの魅力を深く理解し、ライフスタイルに合わせた提案をしてくれます。併設されたカフェ「Earlybirds Breakfast」も人気で、自転車好きのコミュニティスペースとしても機能しています。
  • 公式ホームページ: https://www.circles-jp.com/
  • 店舗名: Movement (ムーブメント)
  • 地域: 大阪府
  • 大阪市内に店舗を構える、カスタムバイクのプロショップ。Surlyの魅力を深く理解しており、ユーザーのスタイルや用途に合わせたオリジナルの1台を丁寧に組み上げてくれます。街乗りから本格的なツーリングまで、Surlyの多様な楽しみ方を提案してくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: https://movement-cycle.com/
  • 店舗名: grumpy (グランピー)
  • 地域: 広島県
  • 広島県で長年Surlyを取り扱っている老舗ショップ。独自のイベントやライド企画も盛んで、Surlyを通じて広がる自転車の楽しみ方を提案しています。バイクパッキングやグラベルライドなど、Surlyの魅力を最大限に引き出すカスタムを得意としています。
  • 公式ホームページ: https://ride.grumpy.jp/
  • 店舗名: サイクルハウス ウエスタン
  • 地域: 愛媛県
  • 愛媛県にあるスポーツバイクショップ。Surlyの魅力を深く理解しており、グラベルロードやツーリングバイクなど、幅広いモデルの提案を得意としています。カスタムの相談にも親身に乗ってくれるので、安心して任せられます。
  • 公式ホームページ: https://www.ch-western.com/
  • 店舗名: 正屋 (MASAYA)
  • 地域: 福岡県
  • 福岡市にあるスポーツバイク専門店で、Surlyの取り扱いも豊富。ロードバイクやマウンテンバイクはもちろん、ツーリングや通勤に使えるSurlyの楽しみ方を提案してくれます。親しみやすい雰囲気も特徴です。
  • 公式ホームページ: https://www.masaya.com/
  • 店舗名: chillnowa (チルノワ)
  • 地域: 北海道
  • 函館市を拠点とする自転車ショップ。雪国ならではのファットバイク文化を牽引しつつ、様々なSurlyのバイクを扱っています。個性的なカスタムを得意とし、Surlyを遊び倒すスタイルを提案してくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: http://www.chillnowa.com/
  • 店舗名: TairaCycle (タイラサイクル)
  • 地域: 沖縄県
  • 沖縄県北谷町にある自転車ショップ。Surlyの正規取扱店として、レースから街乗りまで幅広いニーズに対応しています。沖縄の美しい景色をSurlyで楽しむための提案をしてくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: https://www.tairacycle.com/

記事を読んでSurlyの自転車が気になったら、是非近くのお店に足を運んで実物を見たり、試乗車があれば体験させてもらうのもいいですね!
※上記は代表的な店舗の一部です。最新の取扱状況や在庫については、各店舗のホームページやSNSをご確認いただくか、直接お問い合わせください。

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中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れる30第半ばのクリエイター。 海外の自転車ニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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