自転車うんちく系

SURLY Steamrollerを誰よりも深く掘り下げる。フレームデザイナー、ヒストリー、ジオメトリ、そして僕の理想のビルド。

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

僕のブログではこれまで、SURLYというブランドの哲学や、その代表的なモデルたちについて語ってきました。無骨ながらも実直なモノづくり、そして乗る人の自由な発想を掻き立てる彼らの自転車は、単なる移動手段を超えた、僕たちの生活を豊かにしてくれる「相棒」だと信じています。

今回、そんなSURLYのラインナップの中でも、ひときわ異彩を放つ、しかし語られることの少ない孤高のピストフレーム、「Steamroller(スチームローラー)」を、他のどのブログ記事よりも深く掘り下げていきたいと思います。

前半では、このフレームの誕生秘話、デザイナーの想い、そして秘められたコンセプトに迫ります。後半では、公式サイトからサイズ別のジオメトリ表を徹底分析し、その数値がライドフィールやビルドにどう影響するのかを解説。さらに、僕が考えるSteamrollerと最高の相性を持つパーツを厳選し、ヒロヤス的おすすめビルドをご紹介します。

このフレームに秘められた魅力を余すことなくお伝えすることで、あなたの自転車に対する探求心を刺激し、新たな発見へと導ければ幸いです。

1. 孤高のピストフレーム、Steamroller誕生秘話

SURLY Steamroller。その名前を聞いて、まず思い浮かべるのは、舗装を押し固める巨大な鉄の塊かもしれません。SURLYがこの物騒とも言える名前を、シングルスピードのピストフレームに与えた背景には、一体どんな物語が隠されているのでしょうか。

1-1. SURLYの原点回帰と「タフな日常使い」の追求

SURLYがSteamrollerをリリースしたのは、2000年代初頭のこと。当時、ロードバイクの世界では軽量化と高性能化が急速に進んでいましたが、SURLYはあえて逆行するような、シンプルでタフな自転車作りを提唱していました。

Steamrollerは、まさにその思想を体現する一台として誕生しました。無駄を削ぎ落としたシンプルなシングルスピードという形式は、メンテナンスの手間を減らし、日々の通勤や街乗りといった「日常使い」において、その真価を発揮します。舗装路を力強く、そして大胆に走り抜けるイメージは、「スチームローラー」という名前に象徴的に表されています。

1-2. フレームデザイナーの思想

Steamrollerの具体的なフレームデザイナーの名前は、公式には大きく明かされていません。しかし、当時のSURLYの製品開発に関わっていた人物たちの思想を紐解くことで、その魂を感じ取ることができます。

彼らが重視したのは、流行に左右されない普遍的なデザインと、長年使い込める耐久性でした。Steamrollerの、無駄をそぎ落としたストレートなチューブと、ミニマムなルックスは、まさにその思想の表れと言えるでしょう。

彼らは、Steamrollerを単なる「ギアなしの自転車」としてではなく、「都会の戦士(アーバンウォーリア)」として捉えていたのではないでしょうか。日々の都会のジャングルをタフに生き抜くための、信頼できる鉄の馬。そんな思いが、このフレームには込められているように感じます。

1-3. バックストーリー:隠された多面性

一見するとストイックな印象を受けるSteamrollerですが、実は隠された多面性を秘めています。

シングルスピード、固定ギア専用のフレームでありながら、十分なタイヤクリアランスを持ち、太いタイヤを履くことができます。これは、都会の道の凸凹をものともせず、快適なシティライドを実現するための合理的な解決策でした。

また、リアブレーキのみならず、フロントブレーキの取り付け穴も用意されている点は、安全性を重視するSURLYの細やかさを示しています。固定ギアに慣れていないライダーでも、安心して乗り始めることができる良心的な配慮です。

さらに、必要最低限のダボ穴は、キャリアやフェンダーの取り付けを制限するものの、日常的な使用において必要十分な機能性を備えています。余計なものは付けず、必要最低限の装備でシンプルに乗る。それこそが、Steamrollerの提唱するシティライドのスタイルなのかもしれません。

2. Steamrollerのジオメトリとスペックを徹底解剖

それでは、SURLY公式サイトから抜粋したSteamrollerのサイズ別ジオメトリ表とスペックリストを見ていきましょう。

2-1. ジオメトリの特徴とライディングへの影響

 

サイズ (cm) トップチューブ長 (mm) シートチューブ長 (mm) ヘッドチューブ角 (°) シートチューブ角 (°) チェーンステイ長 (mm) BBドロップ (mm) スタック (mm) リーチ (mm)
53 540 530 73 73.5 420 58 557 373
56 565 560 73 73 420 58 585 386
59 590 590 73 72.5 420 58 613 399

 

このジオメトリ表から、Steamrollerの特徴的な部分を抽出し、それがライドやビルドにどういった影響を与えるのかを見ていきましょう。

  • 73度前後の平行なヘッドアングルとシートアングル: 多くのサイズで73度に近い角度は、比較的垂直な乗車姿勢を生み出します。これにより、都会の交通の中で良好な視界を確保しやすく、体への負担も軽減されます。反応の良いハンドリングを可能にし、都会での操縦を素早くかつ自信を持って行うことができます。
  • 短いチェーンステイ長 (420mm): 420mmという短いチェーンステイ長は、後輪が体の近くに配置されることを意味し、ペダリングパワーをダイレクトに後輪に伝え、鋭い加速を実現します。これは特に固定ギアにとって重要で、ペダルの動きが直接スピードに影響します。また、操作性も向上し、狭いターンや突然の障害物をスムーズに回避することができます。
  • 標準的なBBドロップ (58mm): 58mmのBBドロップは、ペダリング時の安定感とシティライドにおける障害物とのクリアランスのバランスを取った妥当な値です。極端に低すぎず、高すぎない設定は、日常的な使用において多様性を発揮します。
  • 中間的なスタックとリーチ: 全体的に見て平均的な値に落ち着いており、バランスの取れた乗車姿勢を意図していると考えられます。これにより、短距離から中距離までのシティライドを快適に行うことができます。

2-2. スペックリストの読み解きとビルドへの影響

次に、Steamrollerの根幹を支えるスペックを読み解いてみましょう。

  • ヘッド:1-1/8″ スレッドレス 一般的な規格であり、ステムやフォークの選択肢が非常に豊富です。クラシックな見た目ながら、パーツの選択肢という点では現代的な利便性を兼ね備えています。
  • シートポスト径:27.2mm こちらも最も一般的なサイズです。カーボンからアルミ、クロモリまで、あらゆる素材のシートポストを選ぶことができます。また、細い径はフレーム全体のしなりを妨げず、クロモリフレーム特有の快適な乗り心地に貢献します。
  • フロントエンド幅:100mm QR / リアエンド幅:120mm QR フロント100mm、リア120mmというエンド幅は、トラックバイクや固定ギアに特化した最も伝統的な規格です。特にリア120mmは、シングルスピードや固定ギア用のハブしか使えないことを意味し、このフレームの「シンプル」というコンセプトを決定づけています。
  • BB規格:JIS(68mm) こちらも世界中で最も普及しているBB規格です。クランクセットの選択肢が非常に広く、予算や好みに合わせて様々なパーツを組み込むことが可能です。
  • ブレーキ:リムブレーキ(カンチ/Vブレーキ) ディスクブレーキマウントは無く、リムブレーキ専用です。シンプルで軽量なブレーキシステムを選ぶことができ、Steamrollerのミニマルな美学を際立たせます。太いタイヤと組み合わせる場合は、カンチブレーキやVブレーキが選択肢となります。
  • ホイールサイズ:700c (最大38c程度) 700cはロードバイクと同じ規格で、高速走行に適しています。特筆すべきは、38cという太いタイヤまで装着可能なクリアランスです。これにより、単なる舗装路だけでなく、荒れた道や少しのグラベルでも快適に走行できる「タフさ」がSteamrollerに与えられています。
  • 素材:クロモリ(4130クロモリ) SURLYが最も得意とする素材です。頑丈で耐久性が高く、しなやかな乗り心地が特徴です。万が一の破損時も修理が比較的容易なため、まさに一生モノの相棒となり得ます。

3. Steamrollerと最高の相性を持つパーツたち

Steamrollerの潜在能力を最大限に引き出すためには、パーツ選びも重要です。僕が考える、Steamrollerと最高の相性を持つパーツをいくつかご紹介しましょう。

3-1. ホイール:頑丈さと少しの空力性能を

日常的な使用を考えると、耐久性の高いホイールを選ぶことが重要です。丈夫なリムと多くのスポークの組み合わせは、都会の道の衝撃に耐え、安心して乗ることができます。少し深めのリムを選べば、見た目のアクセントになりつつ、わずかながら空力的な利点も得られます。

3-2. タイヤ:太めで快適な都会の選択

「fatties fit fine」の哲学を受け継ぐSURLYならではの提案として、太めのタイヤを選ぶのがおすすめです。28c〜32c程度のタイヤであれば、路面の凹凸を吸収し、快適なシティライドを実現します。耐パンク性能の高いタイヤを選べば、日常使いでのトラブルを減らすことができます。

3-3. ハンドル・ステム:ライディングスタイルに合わせて

ハンドルの選択は、ライディングスタイルに大きく影響します。

  • シティライドを快適に: ライザーバーや少し上向きのプロムナードバーを選べば、アップライトな姿勢で良好な視界を確保できます。
  • 少しアグレッシブに: ドロップハンドルを選べば、体を下げて空気抵抗を減らし、より速いスタイルでシティライドを楽しむことができます。

ステムは、ハンドルの高さを調整する重要なパーツです。自分の体格や好みに合わせて適切な長さと角度のものを選びましょう。

3-4. サドル:長い旅でも快適に

サドルは、快適なシティライドのための最も重要な接触点の一つです。自分の坐骨幅に合った、少し幅広でクッション性のあるサドルを選ぶのがおすすめです。中央に溝があるサドルは、会陰部の圧迫を軽減し、長い旅でも快適さを保ちます。

3-5. ドライブトレイン:シンプルイズベスト

Steamrollerはシングルスピード、固定ギア専用フレームです。耐久性の高いチェーンリングとコグ、そして丈夫なチェーンを選ぶことが重要です。固定ギアに挑戦する場合は、しっかりと固定できるロックリングを選びましょう。

4. ヒロヤス的おすすめSteamrollerビルド

それでは、僕が考える最高のSteamrollerビルドをご紹介しましょう。テーマは「都会のジャングルを素早く、かつ快適に駆け抜ける、少し個性的な都会の選択」です。

  • フレーム:SURLY Steamroller
  • ホイール:H Plus Son Archetype リム × Gran Compe ハブ 32H
  • タイヤ:Panaracer Gravel King Slick 700c × 32c
  • ハンドル:Nitto B809AA プロムナードバー
  • ステム:Nitto UI-2 80mm
  • サドル:Brooks C17 Cambium
  • クランク:Sugino 75 Messenger 46T
  • コグ:EAI Deluxe 17T (Fixed)
  • チェーン:Izumi Standard
  • ペダル:MKS Sylvan Touring
  • ブレーキ:Tektro R559

このビルドでは、少し太めのタイヤで路面の凹凸を快適に吸収しつつ、プロムナードバーでリラックスした乗車姿勢を実現。固定ギアでダイレクトなペダリング感楽しみながら、フロントブレーキで安全性も確保します。Brooksのカンビウムサドルは、シティライドの見た目にもよく似合いますし、長い旅でも快適さを維持してくれます。

【取扱店舗情報】 Surly(サーリー)の自転車に出会える日本のショップ

Surlyの自転車は、独自のスタイルと哲学を持つショップで取り扱われていることが多いです。ここでは、日本全国の代表的なSurly取扱店をいくつかご紹介します。

関東
中部
関西
中国
四国
九州
北海道
沖縄
  • 店舗名: Blue Lug (ブルーラグ)
  • 地域: 東京都
  • 自転車を愛する人々が集まる、東京を代表するカスタムバイクショップ。Surlyをはじめとする個性的なブランドを多数扱い、独自のセンスで組み上げられた自転車は多くのファンを魅了しています。パーツの品揃えも豊富で、気軽に相談できる雰囲気も魅力です。
  • 公式ホームページ: https://bluelug.com/
  • 店舗名: Circles (サークルズ)
  • 地域: 愛知県
  • 名古屋を拠点に、自転車文化の発信地として知られるショップ。Surlyの魅力を深く理解し、ライフスタイルに合わせた提案をしてくれます。併設されたカフェ「Earlybirds Breakfast」も人気で、自転車好きのコミュニティスペースとしても機能しています。
  • 公式ホームページ: https://www.circles-jp.com/
  • 店舗名: Movement (ムーブメント)
  • 地域: 大阪府
  • 大阪市内に店舗を構える、カスタムバイクのプロショップ。Surlyの魅力を深く理解しており、ユーザーのスタイルや用途に合わせたオリジナルの1台を丁寧に組み上げてくれます。街乗りから本格的なツーリングまで、Surlyの多様な楽しみ方を提案してくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: https://www.movement.jp/
  • 店舗名: grumpy (グランピー)
  • 地域: 広島県
  • 広島県で長年Surlyを取り扱っている老舗ショップ。独自のイベントやライド企画も盛んで、Surlyを通じて広がる自転車の楽しみ方を提案しています。バイクパッキングやグラベルライドなど、Surlyの魅力を最大限に引き出すカスタムを得意としています。
  • 公式ホームページ: https://ride.grumpy.jp/
  • 店舗名: BICYCLE SHOP FREEDOM
  • 地域: 愛媛県
  • 愛媛県にあるスポーツバイクショップ。Surlyの魅力を深く理解しており、グラベルロードやツーリングバイクなど、幅広いモデルの提案を得意としています。カスタムの相談にも親身に乗ってくれるので、安心して任せられます。
  • 公式ホームページ: https://www.freedom089.com/
  • 店舗名: 正屋 (MASAYA)
  • 地域: 福岡県
  • 福岡市にあるスポーツバイク専門店で、Surlyの取り扱いも豊富。ロードバイクやマウンテンバイクはもちろん、ツーリングや通勤に使えるSurlyの楽しみ方を提案してくれます。親しみやすい雰囲気も特徴です。
  • 公式ホームページ: https://www.masaya.com/
  • 店舗名: chillnowa (チルノワ)
  • 地域: 北海道
  • 函館市を拠点とする自転車ショップ。雪国ならではのファットバイク文化を牽引しつつ、様々なSurlyのバイクを扱っています。個性的なカスタムを得意とし、Surlyを遊び倒すスタイルを提案してくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: http://www.chillnowa.com/
  • 店舗名: TairaCycle (タイラサイクル)
  • 地域: 沖縄県
  • 沖縄県北谷町にある自転車ショップ。Surlyの正規取扱店として、レースから街乗りまで幅広いニーズに対応しています。沖縄の美しい景色をSurlyで楽しむための提案をしてくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: https://www.tairacycle.com/

記事を読んでSurlyの自転車が気になったら、是非近くのお店に足を運んで実物を見たり、試乗車があれば体験させてもらうのもいいですね!
※上記は代表的な店舗の一部です。最新の取扱状況や在庫については、各店舗のホームページやSNSをご確認いただくか、直接お問い合わせください。

5. まとめ:Steamrollerと共に、街を遊び尽くせ

SURLY Steamrollerは、単純さの中に深い意味を秘めた、乗り手を刺激する魅力的なフレームです。流行に左右されない普遍的なデザイン、シティライドに最適化されたジオメトリ、そして乗り手の個性を表現できる幅広いカスタム。

この記事を通して、Steamrollerの知られざる魅力が少しでも伝わったなら嬉しいです。さあ、あなたもSteamrollerを唯一無二の相棒に、街という名の果てしない遊び場を遊び尽くしてみませんか?

それでは、また次の記事でお会いしましょう!ヒロヤスでした!

OSBN?
Hrys Basics(ひろやす)
Hrys Basics(ひろやす)
Designer & Cr-Mo Freeks
中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れる30第半ばのクリエイター。 海外の自転車ニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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