乗り込んで、歴史を刻む。僕がクロモリにこだわる理由

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が自転車を選ぶ上で何よりも大切にしている、「クロモリ」という素材、そしてそのフレームに秘められた魅力についてお伝えしたいと思います。
皆さんは自転車のフレーム素材と聞いて、何を思い浮かべますか?
おそらく多くの方が、ロードバイクやMTBで主流になっているアルミやカーボンを想像するかもしれませんね。軽くて、速くて、性能を追求するならそれらの素材が正解だという考え方も、もちろんあります。
でも、僕が自転車に求めるのは、それだけじゃないんです。僕は、使い倒して、乗り倒して、その歴史をフレームに刻み込んだ自転車こそが、何よりもかっこいいと信じています。そして、その考えを体現してくれるのが、クロモリ(クロムモリブデン鋼)という素材なんです。
道具としての自転車、相棒としてのクロモリ
自転車は、僕にとって単なる移動手段ではありません。街を探索し、旅をし、時には自分自身と向き合うための大切な道具であり、そして何よりも信頼できる「相棒」です。
アルミやカーボンも素晴らしい素材です。最新のテクノロジーが詰め込まれ、軽量化や剛性の最適化が徹底的に追求されています。しかし、その高性能と引き換えに、ある種の「脆さ」を抱えているのも事実です。アルミは金属疲労によっていつか破断する運命にあり、カーボンは衝撃に弱く、目に見えないクラックが入ってしまうと致命的な破損につながることがあります。乗り込んで、まさにこれから味がでてくる、という頃に、その役目を終えてしまう可能性があるんです。
一方、クロモリは違います。その最大の魅力は、圧倒的な耐久性と、修復の容易さにあります。もし万が一、フレームにひびが入ったり、割れてしまったりしても、溶接で修理ができてしまう場合が多いんです。これは、アルミやカーボンでは考えられないことです。
僕の周りには、何十年も前に作られたヴィンテージのクロモリバイクを、今も現役で乗っている人がたくさんいます。それは、クロモリが「直してでも乗り続けたい」と思わせる魅力と、その思いに応えてくれるだけのポテンシャルを持っているからに他なりません。
旅先で転倒してしまったり、どこかにぶつけてしまったり、アクシデントはつきものです。そんな時でも、「まぁ、なんとかなるか」と思わせてくれる安心感が、クロモリにはあります。そして、その傷の一つ一つが、僕がどこへ行き、どんな景色を見てきたかの証となり、フレームに歴史として刻まれていきます。
軽量化だけが正義じゃない
自転車の進化は、軽量化の歴史と切っても切り離せません。軽ければ軽いほど、加速も上り坂も楽になります。
でも、僕は「軽量化だけが正義ではない」と考えています。
クロモリフレームは、確かにカーボンやアルミに比べると重いです。でも、その重さには、安心感と堅牢さが詰まっています。そして、何よりも乗り心地が素晴らしい。細いチューブがしなやかに路面の凹凸を吸収し、体に伝わる振動を和らげてくれます。長時間乗っても疲れにくいのは、このクロモリ特有の「しなり」があるからこそ。僕がバイクパッキングをしながら旅に出る際も、この乗り心地の良さは大きなアドバンテージになります。
「軽さ」という分かりやすい価値とは違う、「乗り心地の良さ」や「信頼性」という、乗ってみないとわからない、そして時間をかけないとわからない価値。それがクロモリの真骨頂だと僕は思っています。
経年変化が価値になる
僕がデザイナーとしてモノづくりに関わる中で、常に意識していることがあります。それは、「経年変化」という概念です。新品の状態が一番美しいのではなく、使い込むほどに風合いが増し、そのモノが持つストーリーが色濃く現れること。
クロモリフレームは、まさにこの「経年変化」を楽しむことができる素材です。塗装が剥がれても、錆びてきても、それは決して「劣化」ではなく、その自転車が歩んできた道のりの証です。使い込まれた道具が持つ独特の美しさ、無骨でありながらもどこか温かみを感じさせる佇まい。それは、僕らが人生を歩んでいく中で刻まれていくシワや経験と同じように、かけがえのない価値を生み出します。
シンプルで無駄のないクロモリの自転車は、それ自体がデザインとして完成されています。そこに、僕たちが乗り込むことで、新たなデザインが加わっていく。それはまさに、使い手と作り手、そして自転車という存在が一体となって生み出す、唯一無二の作品です。
日常を刻む、最高の道具
僕が暮らす家の近くに、すごく素敵なカフェがあるんです。そこの店主のにーちゃんが、いつもお店の前に止めているのがサーリーのカラテモンキー。後ろには大きな荷台をつけて、毎朝市場で仕入れた大量の食材を運んでいます。トップチューブには、きっとお子さんを乗せるためのサドルがついていて、日常の暮らしに溶け込んでいるのが見て取れます。
そのカラテモンキー、ぱっと見は全然ピカピカじゃないんです。フレームやパーツのあちこちにサビがあって、傷もたくさん。でも、それがたまらなくかっこいい。目立った高価なパーツは一切ついていなくて、あくまで「道具」として、本当に乗り倒されているのが伝わってくるんです。
高価なカーボンロードバイクも美しいけれど、このカラテモンキーの佇まいは、僕が考える「かっこよさ」をすべて体現しています。日々の生活の中で使い込まれ、家族や仕事、旅の歴史が刻まれていく。僕がクロモリに惹かれるのは、まさにこういう自転車をいつか僕自身も育てていきたい、という思いがあるからなんです。
クロモリの歴史とブランド
クロモリという素材は、自転車の歴史と共に歩んできたと言っても過言ではありません。古くは1900年代初頭から自転車フレームに採用され、長きにわたり自転車界を支えてきました。多くの老舗ブランドが、この素材を使い、様々な名車を生み出してきました。彼らは単にフレームを作るだけでなく、その素材の特性を最大限に引き出すための技術や哲学を磨き上げてきたのです。
例えば、イタリアの老舗ブランドCOLNAGOやBianchiは、クロモリフレームで数々のレースを制し、その名を世界に轟かせました。彼らのフレームには、職人の手仕事が生み出す美しいラグや、計算されたチューブの太さ、そして何よりも自転車に対する情熱が詰まっています。
また、アメリカのSurlyやAll-Cityといったブランドは、クロモリを現代のライフスタイルに合わせて再解釈し、グラベルロードやアドベンチャーバイクといった新たなジャンルを切り開きました。彼らは、クロモリのタフさや汎用性の高さを活かし、より多くの人が自転車の旅や冒険を楽しめるようなプロダクトを世に送り出しています。
これらのブランドが共通して持っているのは、単なる性能追求ではない、モノづくりに対する真摯な姿勢です。僕がクロモリに惹かれるのは、その背景にある職人の技術や、ブランドの哲学、そして何よりも、乗り手と共に歴史を刻んでいくという思想に深く共感するからです。
クロモリを代表するプロダクト
クロモリフレームの魅力は、単なるビンテージバイクだけにとどまりません。今も多くのブランドが、現代の技術とデザインを融合させた素晴らしいクロモリバイクを世に送り出しています。ここでは、僕が注目している、いくつかのプロダクトを紹介します。
サーリーの万能ツーリングバイク「Bridge Club」
Surlyは、クロモリフレームのタフさと汎用性を最大限に活かしたバイク作りで知られるブランドです。Bridge Clubは、その中でも特に「どこへでも行ける」を体現した万能な一台。フラットバーで街乗りからダートまで、気兼ねなく走れる手軽さがありながら、バイクパッキングの機材をたっぷりと積載できる拡張性も持っています。シンプルながらもどこか愛嬌のあるデザインは、まさにSurlyの哲学を体現していると言えるでしょう。

クラストの冒険バイク「Evasion」
Crust Bikesは、既成概念にとらわれない自由な発想で、ユニークなクロモリバイクを作り続けるブランドです。Evasionは、その中でも特にブランドの個性が光るアドベンチャーバイク。太いタイヤを履かせたワイルドな見た目と、クロモリ特有のしなやかな乗り心地を両立させています。ドロップハンドルでアドベンチャーツーリングを楽しむもよし、フラットバーでタフな街乗りバイクとして組むもよし。自分だけのスタイルを追求できる自由さが魅力です。

MASHのストリートバイク「Steel」
MASH SFは、サンフランシスコを拠点に、ピストバイクカルチャーを牽引してきたブランドです。MASH Steelは、その名の通りクロモリ製のストリートバイク。シンプルなシングルスピードでありながら、その設計は極めてタフで、街中のトリッキーな動きにもしっかりと対応してくれます。派手な装飾はなく、無骨でミニマルなデザインですが、その潔さがかえってストリートの雰囲気にマッチしています。シンプルだからこそ、乗り手のスタイルが色濃く反映される一台です。

まとめ
僕がクロモリにこだわる理由は、決して最新の素材が劣っているからではありません。僕が自転車という存在に求めている価値が、クロモリという素材の中に詰まっているからです。
それは、使い込むほどに風合いが増し、傷の一つ一つが、僕がどこへ行き、どんな景色を見てきたかの証となり、フレームに歴史として刻まれていくこと。そして、軽量化や性能だけでは測れない、道具としての信頼性や、共に人生を歩んでくれる相棒としての温かさです。
クロモリの自転車は、僕に「乗り込む」という行為の楽しさを教えてくれます。そして、その歩みがいちばんの価値があるものだと、僕は心から信じています。
皆さんがもし、新しい自転車を探しているなら、ぜひ一度クロモリフレームのバイクを検討してみてください。もしかしたら、僕と同じように、その奥深い魅力に気づくかもしれません。そして、あなただけの歴史を刻んでくれる、最高の相棒を見つけられるかもしれません。
あなたの自転車との付き合い方、クロモリフレームについて思うことなど、ぜひコメントで教えてください!
それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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