自転車うんちく系

クロモリ愛を綴る「All-City Cycles」の物語:忘れられないブランドの思想と、新たな旅立ち

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。 僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が心から愛する自転車ブランドについてお伝えしたいと思います。それは、惜しまれつつもその歴史に幕を閉じることが決まった「All-City Cycles」です。

このブランドのことを語る上で、機能性やスペックだけでは語り尽くせない、深い物語と哲学があります。その独自の美学と、僕たち自転車乗りをワクワクさせてくれるその存在は、単なる道具の枠を超えて、僕たちのライフスタイルそのものを豊かにしてくれました。今回は、なぜ僕がAll-Cityにこれほど惹かれるのか、そしてその終わりと、創設者が歩み始めた新たな道について、僕の視点から深く掘り下げてみたいと思います。

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All-City Cyclesの始まりと、彼らが追求した美学

All-City Cyclesは、2009年にアメリカ・ミネアポリスで誕生しました。創設者のジェフ・フレインは、トラックバイクやシングルスピードのカルチャーに深く根ざした人物。彼の目標は、ただ自転車を売るのではなく、アーバンサイクリングの文化そのものに貢献することでした。彼らが目指したのは、単なる移動手段ではなく、「美しく、エレガントで、そして最高に楽しい自転車」を作ること。

その哲学は、彼らの製品の細部にまで宿っています。 大量生産のバイクとは一線を画す、カスタムのチューブセット。機能性はもちろん、そこに美しさを加えるための手間暇を惜しまないカスタムペイント。そして、ミネアポリスの象徴である「ヘネピン橋」をモチーフにしたヘッドバッジなど、プロダクトの随所にそのこだわりが光っていました。

彼らが「Party Brand」とも呼ばれたように、自転車に乗ることを純粋に楽しむという精神は、僕たちのようなライダーの心を強く掴みました。まるでアート作品のような美しさを持つ彼らのバイクは、乗るたびに僕たちをワクワクさせてくれたのです。

惜しまれつつもブランドが幕を閉じるまで

多くのファンに愛されたAll-Cityですが、ブランドを所有するQBP(Quality Bicycle Products)から、ブランドの生産を終了し、数年以内にリタイアさせることが発表されました。2024年以降、新製品の開発は行われず、既存のモデルや新色などが順次マーケットから姿を消していくことになります。

このニュースは、僕を含め多くのAll-Cityファンに衝撃を与えました。しかし、これは唐突な出来事ではありませんでした。ブランドの創設者であるジェフ・フレインは、数年前にAll-Cityを離れていました。彼の哲学と情熱が詰まったAll-Cityというブランドは、彼の離脱後も素晴らしいプロダクトを作り続けましたが、やはり彼の魂が宿っていた頃とは少し違ったのかもしれません。ブランドの「心臓」とも言える存在が離れたことで、こうした結末は必然だったのかもしれません。

All-Cityの精神を受け継ぐ「Wilde」

All-Cityの歴史が終わりを迎える一方で、ジェフ・フレインは新たなブランドを立ち上げました。その名も「Wilde Bicycle Co.」。

All-Cityで培った経験と哲学を、Wildeという新たなステージで具現化しています。Wildeのバイクは、All-Cityが追求した「楽しさ」や「美しさ」といった要素をさらに進化させ、より自由で冒険的なライドにフォーカスしています。All-Cityのファンだった僕たちは、ジェフが新たに創り出すブランドの行く末を、静かに見守り、そして大いに期待しているのです。All-Cityの魂は、決して消えることはありません。それはWildeというブランドに引き継がれ、これからも僕たちライダーの心を豊かにしてくれるはずです。

All-Cityを代表するプロダクトたち

僕が心惹かれた、All-Cityの代表的なプロダクトたちをいくつかご紹介します。どのモデルも、彼らの哲学が凝縮された素晴らしいバイクばかりです。

Space Horse

All-Cityを代表する万能クロモリロード。ロードバイクのような軽快な走りと、グラベルロードのタフさを併せ持つ、まさに一台で何役もこなせる名作です。バイクパッキングにも対応する拡張性も持ち合わせており、街乗りからロングライド、そして冒険へと連れ出してくれる最高の相棒です。

Gorilla Monsoon

650Bホイールを履いた、冒険心をくすぐるグラベルロードです。ファットタイヤを装着してトレイルを攻めたり、キャリアやバッグを付けて壮大な旅に出たりと、乗り手の想像力を掻き立てる自由なバイクです。僕が一番愛するバイクパッキングの旅に、最も連れ出したい一台でもあります。

Cosmic Stallion

グラベルロードの中でも、特にレース志向の強いモデルとして知られています。その名が示すように、宇宙を駆ける駿馬のように速く、軽やかな走りを実現しています。クロモリのしなやかさと、レースでのパフォーマンスを両立させた、まさにAll-Cityの技術の結晶と言えるでしょう。チタン素材を採用したモデルも存在します。

Thunderdome

UCI規定に準拠した、トラックレーサーです。トラック競技に特化した設計で、その名の通り「ベルドローム(競技場)」を駆け抜けるために生まれてきました。アルミ製のフレームは、驚くべき剛性と軽さを両立しており、スピードを追求するライダーの心を鷲掴みにします。

Super Professional

アーバンクロスの名にふさわしい、都市での走りに特化したモデルです。ギアードとシングルスピードを自在に切り替えられるスライド式ドロップアウトシステムが特徴的で、フラットバーやドロップバーなど、多様なスタイルに対応する汎用性の高さも魅力です。通勤から週末の冒険まで、タフに使える一台です。

Zig Zag

現代のロードバイクに対するAll-Cityからの答えとも言えるモデルです。クロモリならではのしなやかな乗り心地はそのままに、最新のロードバイクが持つスピードと快適性を両立させています。長いライドでも疲れにくいジオメトリーと、キビキビとした走りを両立した、まさにお手本のようなクロモリロードです。

Mr. Pink

クラシックなロードバイクのスタイルを追求したモデルです。細身のクロモリチューブと、美しいラグワークが特徴で、ヴィンテージバイクのような雰囲気を持ちながら、現代的なパーツにも対応しています。ロードバイクの本質的な美しさを再認識させてくれる一台です。

Big Block

ピストバイクのライダーから絶大な支持を得た、固定ギアのモデルです。シンプルでありながら、彼らのデザイン哲学が凝縮されたような美しいルックスは、街を走るアート作品のようでした。

Nature Cross / Nature Boy

シクロクロスレースのために設計されたモデルです。アグレッシブなジオメトリーと軽量なフレームは、レースでの俊敏な走りを可能にします。特にNature Boyは、シングルスピードのシクロクロスバイクとして、多くのライダーに愛されていました。

Electric Queen / JYD / Log Lady

マウンテンバイクのカテゴリーにも、彼らの魂が宿っていました。Electric Queenは、27.5+にも対応するタフなMTBで、Log LadyやJYDは、その名の通りワイルドなライドを楽しむためのモデルでした。どれもAll-Cityらしい遊び心と実用性を兼ね備えたラインナップです。

まとめ

All-City Cyclesのブランド終了は、僕を含め多くの自転車乗りにとって、一つの時代の終わりを告げる寂しいニュースでした。しかし、この「終わり」は、単なる消滅ではありません。彼らが作り上げてきた 「機能性だけでなく、美しさと物語を大切にする」 という哲学は、僕たちの心の中に深く刻まれています。

そして、その哲学は、創設者のジェフ・フレインが立ち上げた 「Wilde Bicycle Co.」 に確かに引き継がれています。All-Cityが追求した 「楽しさ」「美しさ」 は、Wildeという新たなステージで、さらに自由で冒険的なライドへと昇華されていくことでしょう。

僕たちが愛したAll-Cityのバイクたちは、今後、より一層希少な存在になっていくかもしれません。しかし、彼らが僕たちに教えてくれた 「自転車に乗る楽しさ」「道具を愛すること」 という精神は、決して色褪せることはありません。一台一台のバイクに宿る物語は、これからも僕たちライダーによって語り継がれていくはずです。

このブログを読んでくださっている皆さんの心の中にも、きっとAll-Cityのバイクが描く特別な景色があるはずです。皆さんのAll-Cityに対する思い入れや、お気に入りのモデルがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね!

それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!

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中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れる30第半ばのクリエイター。 海外の自転車ニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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