クランクブラザーズ徹底解剖!代表プロダクトやメーカーの歴史、製品に込められたコンセプトをご紹介します。

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。
僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は僕が個人的にとても注目している自転車パーツメーカー、「クランクブラザーズ」について、その魅力の核心に迫ってみたいと思います。
自転車好きなら、一度はその独創的なデザインのプロダクトを目にしたことがあるはず。特に、泡立て器のような形状の「エッグビーター」ペダルは、あまりにも有名ですよね。しかし、その美しいデザインの裏に、どんな哲学や物語が隠されているのかを知る人は、意外と少ないのではないでしょうか。
ただのパーツメーカーとして語るには、あまりにもったいない。彼らのモノづくりには、僕らデザイナーの心をくすぐる「何か」が確実に存在します。今回は、他のどのメディアよりも一歩深く、クrankbrothersというブランドの核心に触れるようなお話ができればと思っています。創業者たちの情熱から、製品一つ一つに込められた思想まで、じっくりと紐解いていきましょう。
ラグナビーチの小さなガレージから始まった物語
クランクブラザーズの歴史は、1997年、アメリカ・カリフォルニア州の美しい海岸沿いの街、ラグナビーチで幕を開けます。創業者であるカール・ウィンフォードナーとフランク・ハーマンセン。この二人の出会いが、すべての始まりでした。
面白いことに、彼らはもともと自転車業界の人間ではなく、スキューバダイビング用品の会社で働いていました。カールがエンジニア、そしてフランクがインダストリアルデザイナー。異なる専門分野を持つ二人が、デザインパートナーとして意気投合するのに時間はかかりませんでした。
やがて大企業での仕事に物足りなさを感じ始めた二人は、共通の情熱であった「サイクリング」の世界で、自分たちの理想を形にすべく独立。ラグナビーチの小さなガレージを拠点に、サイドビジネスとしてバイクパーツのデザインを始めたのです。
ちなみに「クランクブラザーズ」というブランド名。これは、周りの友人たちがカールとフランク、二人の名前をいつもごちゃ混ぜにして呼んでいたことから、「いっそのこと、二人をまとめて『クランク』と呼ぼう」となった逸話から生まれたそうです。なんともユニークで、彼らの親密な関係性が伝わってきますよね。
最初の一歩はペダルではなかった
今でこそペダルのイメージが強いクランクブラザーズですが、彼らが最初に世に送り出した製品は、意外にもペダルではありませんでした。それは「Speed Lever(スピードレバー)」という、非常に革新的なタイヤレバーだったのです。
ここにも、彼らのデザイン哲学が色濃く反映されています。彼らのモノづくりの信条は、「白紙の状態から始め、すべてのライドを前回よりも優れたものにする製品で終える」というもの。既存の概念にとらわれず、ゼロベースで物事を考え、サイクリストが抱える問題を解決するための、美しく機能的なプロダクトを生み出す。このスピードレバーは、まさにその哲学を体現した最初の一歩でした。
革命を起こした「エッグビーター」の誕生
そして2001年、ついにブランドの象徴とも言える「エッグビーター」ペダルが誕生します。
その名の通り、泡立て器のようなミニマルなデザインは、当時のMTBペダルの中でも異彩を放っていました。しかし、そのデザインは単なる奇抜さだけを狙ったものではありません。泥詰まりに非常に強く、どの角度からでもステップインできる4面キャッチ機構は、特にマウンテンバイクのクロスカントリーやシクロクロスのレースシーンで絶大な支持を集めました。
美しさと機能性が見事に両立されたエッグビーターの登場は、まさに革命的でした。このペダルによって、クランクブラザーズの名は世界中のサイクリストに知れ渡ることになったのです。
デザインと機能性の間で。愛され、時に議論を呼ぶ哲学
クランクブラザーズの製品は、しばしば「love/hate relationship(愛憎関係)」と表現されることがあります。その独創的なデザインと機構は、熱狂的なファンを生む一方で、時にはそのデリケートさから批判的な意見を生むこともありました。
しかし、創業者たちもそれを理解した上で、自分たちの信念を貫いています。彼らは「他と違うものを作るのは、その製品カテゴリーに何か新しい価値をもたらし、その存在を正当化するものでなければならないからだ」と語っています。見た目のデザインだけでなく、そこには必ず機能的な裏付けがある。この揺るぎないスタンスこそが、クランクブラザーズが唯一無二の存在であり続ける理由なのでしょう。
日本での展開と現在
日本にいつ頃から本格的に流通し始めたのか、正確な記録を見つけるのは難しいのですが、現在ではライトウェイプロダクツジャパンとカワシマサイクルサプライという二つの代理店が国内での販売を担っており、僕らの身近なショップでも手軽に製品を見つけることができます。すっかり日本の自転車シーンにも馴染んだブランドの一つと言えるでしょう。
その後、クランクブラザーズはイタリアのサドルメーカー「セラ・ロイヤル」グループの一員となり、より豊富なリソースを得てさらに成長を続けています。ペダルやツールの枠を超え、ホイールセットやドロッパーシートポスト、そして近年ではサイクリングシューズまで、その創造性の幅を広げているのです。
クランクブラザーズを代表するプロダクト
ここで、現在のラインナップから、ブランドを象徴するいくつかの製品をジャンル別に見ていきましょう。
ペダル
- eggbeater(エッグビーター): ブランドのアイコン。軽量で泥はけ性能に優れ、クロスカントリーやシクロクロスに最適。
- candy(キャンディ): エッグビーターのステップイン機構の周りに小さなプラットフォームを設け、安定感を高めたモデル。トレイルライドやグラベルロードにも人気です。
- mallet(マレット): ダウンヒルやエンデューロ向け。広いプラットフォームとピンが、激しい下りでの安定したペダリングをサポートします。
- stamp(スタンプ): フラットペダルの代表作。豊富なサイズ展開と考え抜かれたピン配置で、足のサイズに合わせた最適なグリップ力を提供します。

ツール
- マルチツール: 美しいアルミ製のケースに、必要十分な工具が機能的に収められています。デザイン性の高さから、持っているだけで満足感を得られる逸品です。
ホイールやその他のコンポーネント
- synthesis(シンセシス)ホイールセット: 前後で異なるリム幅やスポーク数、テンションを採用し、フロントの追従性とリアの剛性を両立させたユニークな設計思想のホイール。
- highline(ハイライン)ドロッパーシートポスト: スムーズな作動と高い信頼性で評価の高いドロッパーポスト。バイクの操作性を格段に向上させます。
まとめ
クランクブラザーズというブランドを深掘りしていくと、そこには単なるパーツメーカーという言葉だけでは片付けられない、熱い情熱と哲学の物語がありました。
カリフォルニアのガレージで、二人のデザイナーが抱いた「サイクリングをもっと良くしたい」という純粋な想い。既存の常識を疑い、白紙のキャンバスに機能美を描き出す創造性。彼らの製品が僕らの心を掴んで離さないのは、その背景にあるストーリーと、製品の細部にまで宿る作り手の体温を感じ取れるからなのかもしれません。
彼らはこれからも、時に僕らを驚かせ、時に議論を巻き起こしながら、自転車の世界に新しい価値を問いかけ続けてくれるはずです。クランクブラザーズのプロダクトを手に取ったとき、ぜひその裏側にある物語に思いを馳せてみてください。きっと、あなたのサイクルライフはもっと豊かなものになるでしょう。
皆さんはクランクブラザーズの製品を使ったことがありますか?ぜひ、コメントであなたのお気に入りのアイテムや、製品にまつわるエピソードを教えてくださいね。
それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!