雪と砂をも征服するふとっちょタイヤ。ファットバイクSurly Pugsleyを徹底解剖!

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。
僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が個人的に「自転車の常識を覆した」と称賛している、一つの傑作、**Surly Pugsley(パグスレイ)**について、深く語り尽くしたいと思います。
パグスレイは、太いタイヤを持つファットバイクの礎を築いた、いわば伝説のフレームです。しかし、このバイクの魅力は、ただタイヤが太いという単純なことではありません。そこには、Surlyというブランドの、常識にとらわれない深い哲学と、独自のストーリーが詰まっています。
今回は、このパグスレイがなぜ生まれたのかという歴史から、他のファットバイクとは一線を画すその独自のジオメトリ、そして乗り味まで、他のどの記事よりも深く掘り下げていきます。
Part 1: 誕生の背景と哲学
「ないなら作ればいい」というDIY精神
パグスレイの物語は、Surlyの創設者たちが、アラスカやミネソタの過酷な冬を自転車で走るために、当時の自転車の限界に挑戦したことから始まります。彼らは、通常のMTBでは埋まってしまう雪の上を走るため、既存のリムやフレームを大胆に改造し、極太タイヤを装着することを試みました。
この「ないなら作ればいい」というDIY精神と、常識を打ち破る発想から生まれたのが、このパグスレイです。それは、単なる新しい自転車のジャンルを生み出しただけでなく、**「自転車は、場所を選ばず、いつでもどこでも自由に走るための道具である」**という、Surlyのブランド哲学そのものを体現していました。
なぜオフセット?パグスレイ最大の謎と答え
パグスレイのデザインで最も特異なのが、フレームとフォークのオフセットです。これは、リアエンドがセンターから右側にずれており、それに合わせてフロントフォークも右にずれています。
なぜ、こんな奇妙な形をしているのか?その理由は、「前後輪のハブの互換性を確保するため」です。
当時のファットバイクはまだ規格が定まっておらず、専用のハブが必要でした。しかし、Surlyは、旅先でトラブルが起きたときでも、リアホイールをそのままフロントフォークに装着できるように、あえて前後輪を同じハブ規格(当時主流だった135mm)でオフセットさせたのです。
これは、旅の途中でハブが壊れたり、スポークが折れたりした際に、スペアパーツがなくても応急処置ができるように、というメーカーの深い配慮から生まれたデザインでした。派手さやルックスのためではなく、**「究極の実用性」**を追求した結果なのです。
Part 2: ジオメトリが語る、全地形対応の安定感
パグスレイのユニークなジオメトリは、その乗り味に決定的な影響を与えています。
Pugsley ジオメトリ表(公式サイトより抜粋)
サイズ | XS | S | M | L | XL |
---|---|---|---|---|---|
シートチューブ長 (C-T) | 356.5mm | 406.4mm | 457.2mm | 508mm | 558.8mm |
トップチューブ長 (ホリゾンタル換算) | 545.8mm | 554.3mm | 565.5mm | 581.9mm | 600mm |
ヘッドチューブアングル | 70° | 70.5° | 70.5° | 70.5° | 70.5° |
シートチューブアングル | 73° | 72° | 72° | 72° | 72° |
チェーンステー長 | 448.1mm | 448.1mm | 448.1mm | 448.1mm | 448.1mm |
BBドロップ | 55mm | 55mm | 55mm | 55mm | 55mm |
フォークオフセット | 43mm | 43mm | 43mm | 43mm | 43mm |
ホイールベース | 1061.6mm | 1067.4mm | 1082.4mm | 1097.3mm | 1118.8mm |
スタンドオーバーハイト | 734.9mm | 758.7mm | 786.5mm | 819.6mm | 853mm |
ズバリ解説!特徴的なジオメトリがもたらす効果
このジオメトリ表の中で、パグスレイの哲学を最も強く示しているのが、オフセットされたフォークとフレーム、そして低重心設計です。
- オフセットフレームとフォーク: これは先に述べたように、前後輪のハブの共通化という実用的な理由から生まれたものです。このデザインは、左右非対称なものの、ライド中のバランスに違和感を与えることはありません。むしろ、荒れた路面での左右の安定感に貢献しています。
- 寝たヘッドチューブアングル(70.5°): このアングルは、まるでバイクが路面に吸い付くような、抜群の直進安定性を生み出します。特に、雪道や砂地など、ハンドルを取られやすい路面で、その恩恵を強く感じることができます。
- 低いBBドロップ(55mm): この低いBBハイトは、ライダーの重心を下げ、バイク全体の安定感を高めます。パグスレイの太いタイヤと相まって、まるで四輪駆動車のように、どんな路面でも安心して走り続けることができます。
Part 3: 旅を支えるタフなスペック
1. Surly独自のクロモリチューブ「Natch」
パグスレイは、Surlyが独自にブレンドした**「Natch」**チューブを使用しています。クロモリの持つしなやかな乗り味と、激しいライドに耐えうる圧倒的な頑丈さを両立しています。
2. オフセットハブ&ハブ互換性
パグスレイのフレームは、135mm幅のオフセットハブに対応します。これは、現代のMTBハブとは異なる特殊な規格ですが、これにより前後輪のハブを共通化できるというユニークなメリットが生まれています。
3. 圧倒的なクリアランス
26インチの4.0インチ幅という極太タイヤに対応します。このクリアランスのおかげで、雪道や砂地、さらには岩がゴロゴロしているような悪路も、路面を掴むようにして走破できます。
4. 豊富なダボ穴と拡張性
フロントフォークには、サイドキャリアやケージを取り付けるためのダボ穴が上下に計3つ、さらにはフェンダーアイレットも完備。リアエンドやシートステーにもキャリアやフェンダー用のマウントが用意されています。これにより、アイデア次第で無限のカスタムが可能です。
Part 4: ヒロヤス的!おすすめビルド
パグスレイは、そのままでも十分魅力的ですが、自分だけの用途に合わせてパーツを一つずつ選んでいくのが最高の楽しみ方です。僕がもしパグスレイで冒険に出るなら、こんなビルドを考えます。
おすすめコンセプト:雪山も砂漠も走破する「探検家仕様」
- コンポーネント:
- Shimano Deore/SLX(1×11または1×12)
- シンプルで耐久性が高く、ワイドなギア比を持つMTB系のコンポーネントが、パグスレイの哲学に最も合います。フロントシングルで、トラブルのリスクを減らします。
- ホイール&タイヤ:
- ハブ: Surly純正の135mmオフセットハブ。
- タイヤ: Surly Nate(ネイト)
- どんな路面でも高いグリップ力を発揮する、最も汎用性の高いファットバイクタイヤです。雪道から岩場まで、これ一本で乗り切れます。
- ハンドル&サドル:
- ハンドル: Jones Loop H-Bar
- パグスレイのゆったりとしたジオメトリと相性が良く、長距離を走っても疲れにくいのが魅力。多数のライトやバッグを取り付けるスペースも確保できます。
- サドル: Brooks C17 Carved
- ラバー製なので雨を気にせず、穴あきタイプなのでお尻への圧迫も少ないです。クロモリフレームのしなやかさと相まって、最高の乗り心地を提供してくれます。
- その他:
- キャリア: Surly純正のリアキャリアやフロントラック。
- バッグ: フレームバッグをメインに、ボトルケージには大きめのカーゴケージを装着。
なぜこのビルドなのか?
このビルドの意図は、「シンプルに、しかし最高のパフォーマンスで、どんな場所も走破する」ことです。頑丈なフレームに、信頼性の高いパーツを組み合わせることで、どんな旅でも安心して走り続けられる。そして、多機能なハンドルや豊富なバッグで、どんな荷物もスマートに運ぶことができるのです。
まとめ:パグスレイは、旅そのもの。
いかがでしたでしょうか?
Surly Pugsleyは、単なるファットバイクではありません。それは、**「自転車でどこまで行けるか?」**という問いに対する、Surlyというブランドの哲学が詰まった、生きた「探検ツール」です。
決して最新鋭の技術や軽さを誇るバイクではありません。しかし、そのすべてが旅のために設計され、組み上げられています。
もしあなたが、人里離れた雪道や、果てしない砂漠を走ってみたい、と漠然とでも考えているなら、このフレームは最高の相棒になってくれるはずです。
それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!