自転車うんちく系

「Wilde : Supertramp」:現代に蘇る、”クラシックな冒険”の魂。Wildeが描くオールテレインバイクの理想形

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

先日、Wilde Bicycle Co.というブランドについて深く掘り下げる記事を書きました。その中で、写真にも出していた「Supertramp」というフレームがかっこよすぎてかっこよすぎて。。。。
このモデル、実は以前から気になっていました。特に、トップチューブの特徴的な円弧。このスタイルは、まるで昔のMTB(マウンテンバイク)を彷彿とさせ、なんとも言えない懐かしさと同時に、新しいカッコよさを感じさせてくれます。

今回は、その「Supertramp」というバイクが、一体どのようなコンセプトと歴史を持って生まれたのか、そしてそこに込められたデザイナーの想い、さらにはフレームの細かなディテールやジオメトリまで、僕なりに深く掘り下げてみたいと思います。


1. デザイナーJeffrey G. Franeの「愛」が詰まったバイク

「Supertramp」を語る上で、Wildeの創設者である**Jeffrey G. Frane(ジェフリー・G・フレイン)**の存在は欠かせません。彼は、前身であるALL-CITY時代から、熱心な自転車ギークとして知られていました。特に、ヴィンテージMTBのジャンルに深い愛情を注いでいたそうです。

ここ数年、Old MTBやATB(オールテレインバイク)への回帰的なトレンドが世界的に広まっていますが、ジェフ自身、このトレンドを牽引した一人と言っても過言ではありません。彼は、そうしたクラシックなバイクの持つ「素晴らしいところ」を抽出し、それを現代の技術と機能でアップデートし、究極の「最も便利で快適なバイク」へと昇華させようと考えました。

その想いを形にしたのが、この「Supertramp」です。それは、まさに彼がサイクリングに捧げる**「ラブレター」**のような存在であり、彼の経験、知識、そして情熱のすべてが注ぎ込まれています。

2. 「Klunker」スタイルから読み解くデザインの意図

「Supertramp」の最も象徴的なデザインは、まさにこの特徴的なトップチューブです。これは、1970年代にカリフォルニアの山々を駆け抜けた、元祖MTBともいえる**「Klunker(クランカー)」**スタイルを強く意識したものです。

当時のクランカーバイクは、ビーチクルーザーや古い自転車を改造して作られ、トップチューブは水平に、そしてハンドルはアップライトなフラットバーが主流でした。このスタイルは、単なる見た目のレトロさだけではありません。

  • 頑丈さの象徴: 特徴的なトップチューブは、フレームの剛性を高め、タフなライドにも耐えうる強度を確保します。
  • 歴史への敬意: Klunkerという、自転車の歴史における重要なマイルストーンへのオマージュであり、ジェフの深い自転車愛を物語っています。

このデザインは、見た目のカッコよさだけでなく、機能性、そして歴史への敬意が詰まった、非常に考え抜かれた設計なのです。

3. 細部までこだわり抜かれたフレームとジオメトリ

「Supertramp」は、クラシックなスタイルの中に、現代のテクノロジーと快適性を融合させた、次世代のオールテレインバイク(ATB)として設計されています。そのこだわりは、各部のディテールとジオメトリにまで及んでいます。

a. ジオメトリ:安定性と快適性の絶妙なバランス

「Supertramp」のジオメトリは、特にツーリングやバイクパッキングでの安定性を重視して設計されています。

  • ヘッドチューブアングル: 比較的寝かせた設計となっており、高速での安定性を確保しています。これは、荷物を満載した状態でも、ハンドルが振られにくく、安心して下り坂をクリアできることを意味します。
  • チェーンステー長: やや長めに設定されたチェーンステーは、積載時のリアの挙動を安定させ、パニアバッグとペダリングの干渉も防ぎます。
  • BBハイト: オフロードでの走破性を考慮し、一般的なグラベルバイクよりも少し高めのBB(ボトムブラケット)ハイトに設定されています。これにより、岩や根っこなどの障害物を乗り越えやすくなっています。

これらの数値は、単なる「速さ」を追求するロードバイクのジオメトリとは異なり、長距離を快適に、そして安全に走破するための、まさに「快適さこそ速さの秘訣」という哲学を体現しています。

b. フレームディテール:驚くほどの多用途性

フレームには、ジェフのこれまでの経験と、使い手への深い理解が凝縮された、細やかなディテールが盛り込まれています。

  • TLCチューブ: 前述の通り、タフで軽く、そしてしなやかなWilde独自のクロモリチューブが採用されています。これにより、頑丈でありながらも、路面からの不快な振動を効果的に吸収し、長時間のライドでも疲れにくい乗り心地を実現しています。
  • ヘッドチューブ: 強度とカスタム性の両立を図るため、44mmのヘッドチューブが採用されています。これにより、多様なフォークやヘッドセットの選択肢が生まれ、将来的なカスタムの幅を広げています。
  • 豊富なマウント: ダウンチューブの上下、シートチューブ、さらにはフォークブレードにも、複数のダボ穴(3-packマウント)が設けられています。これにより、ボトルケージはもちろん、ラックやカーゴケージを自由に取り付けることができ、まさに無限の可能性を秘めた積載力を誇ります。
  • ドロッパーシートポスト対応: 内部にドロッパーシートポスト用のケーブルルーティングが設けられており、トレイルでのライドや、頻繁な乗り降りを快適にするための配慮がなされています。

4. 「Supertramp」が僕たちに問いかけるもの

僕は、デザイナーとして、この「Supertramp」というバイクから、とても大切なメッセージを受け取った気がしています。

それは、「一つの自転車で、人生の可能性を探求できる」ということです。

ロードバイク、マウンテンバイク、グラベルバイク…と、一つの用途に特化した自転車を何台も持つのが、これまでの常識でした。しかし、「Supertramp」は、その常識を覆します。

  • 通勤や日常の買い物。
  • 週末のグラベルライド。
  • キャンプ道具を積んでのバイクパッキング。
  • そして、友人とカフェに立ち寄るポタリング。

この一台があれば、自転車に乗るすべての瞬間を、特別なものに変えてくれます。それは、まるで人生の「スーパートランプ(放浪者)」のように、どこへでも自由に、気ままに旅に出られる。そんなワクワクするような感覚を与えてくれるのです。

5. まとめ:「スーパートランプ」の哲学

「Supertramp」は、単なるモノづくりではありません。それは、サイクリングという行為を通じて、僕たち自身の人生を豊かにするための「哲学」を体現したプロダクトです。

「快適さこそ速さの秘訣」というWildeのブランド哲学は、このバイクに凝縮されています。無理をして速さを追い求めるのではなく、心と身体が心地よいと感じるペースで、気の向くままに走る。その先に、本当の「速さ」や「楽しさ」が待っているのだと、このバイクは教えてくれています。

もしあなたが、次に手に入れる一台を悩んでいるのなら、この「Supertramp」という選択肢を、ぜひ一度考えてみてください。

きっと、あなたの自転車ライフは、より豊かで、より自由なものになるはずです。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!ヒロヤスでした!

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Hrys Basics(ひろやす)
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Designer & Cr-Mo Freeks
中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れる30第半ばのクリエイター。 海外の自転車ニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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