時代を超えて輝き続ける足元の名品。三ヶ島(MKS)ペダル「シルヴァン」シリーズ徹底解剖

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。
僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たちクロモリ好き、いや、すべての自転車を愛する人々の足元を長年支え続けてきた、ある普遍的なプロダクトについてお伝えしたいと思います。それは、日本の老舗ペダルメーカー、三ヶ島製作所(MKS)が生み出した傑作、「シルヴァン(SYLVAN)」シリーズです。
このペダル、きっと多くの人が一度は目にしたり、実際に使ったりしたことがあるのではないでしょうか。クラシカルな自転車にはもちろん、最新のグラベルバイクや街乗りバイクにも不思議と馴染んでしまう、あの美しい佇まいのペダルです。ただの「昔ながらのペダル」で終わらない、その魅力の奥深くには、日本のモノづくりへの情熱と、時代を超えて愛される理由が隠されていました。今回はその歴史的背景から、製品の持つ哲学、そして現行で確認できる全ラインナップを網羅して、どこよりも詳しく掘り下げていきたいと思います。
日本の誇るペダル専門メーカー「三ヶ島製作所」の歩み
シルヴァンシリーズを語る上で、まず触れなければならないのが、それを生み出した三ヶ島製作所(MKS)の存在です。
1943年、航空機部品の製造からその歴史をスタートさせた同社は、戦後の1946年に自転車ペダル製造へと事業を転換。そして1949年に埼玉県所沢市で「株式会社三ヶ島製作所」として設立されました。以来、70年以上にわたって「Made in Japan」にこだわり、高品質なペダルを世界に送り出し続けています。
特に、競輪選手が使用するNJS認定パーツを数多く手掛けていることからも、その品質と信頼性の高さは折り紙付きです。コンマミリ単位の精度が求められる世界で鍛え上げられた技術が、僕たちが普段使うペダル一つひとつに惜しみなく注がれているのです。この「本物」を作り続ける姿勢こそが、MKSというブランドの根幹を成しています。

1979年の誕生から続くロングセラー「シルヴァン」
そんな三ヶ島製作所が1979年に世に送り出したのが、このシルヴァンシリーズです。発売から40年以上が経過した現在でも、デザインをほとんど変えることなく生産され、世界中のサイクリストから支持され続けている、まさに「生きた伝説」とも言えるペダルです。
シルヴァンシリーズが持つ最大の魅力は、その「普遍性」にあると僕は思います。磨き上げられたアルミの輝きと、機能性を突き詰めたシンプルで美しいフォルム。それはどんな時代の、どんなスタイルの自転車にも寄り添う懐の深さを持っています。クロモリフレームの繊細なパイプワークとの相性は言うまでもなく最高です。
そして、忘れてはならないのが、その驚くほど滑らかな回転性能。伝統的なカップ&コーン式のベアリングを採用したモデルは、定期的なメンテナンスを施すことで、新品同様の回転を長く維持することができます。自分の手で道具を整備し、長く使い続ける。そんな自転車との豊かな関わり方を、このペダルは教えてくれるような気がします。
なぜ、これほどまでに愛されるのか?
では、なぜシルヴァンシリーズは40年以上もの間、多くのサイクリストの心を掴んで離さないのでしょうか。僕なりにその理由を考えてみました。
一つは、やはり圧倒的な品質と耐久性です。MKSのペダルは、熟練の職人の手によって一つひとつ丁寧に組み立て、調整されています。その滑らかな回転は、ペダリングの効率を高め、長距離を走った時の疲労を確実に軽減してくれます。使い捨てが当たり前の時代に、「良いものを、長く使う」という価値観を体現した製品なのです。
次に、カスタムの幅を広げる多様なラインナップ。一口にシルヴァンと言っても、実は様々なモデルが存在します。自分のライディングスタイルや自転車のコンセプトに合わせて最適なモデルを選べるのも、大きな魅力です。
そして最後に、進化を止めない姿勢です。伝統的なデザインと構造を守り続ける一方で、近年では「NEXT」シリーズや「Ezy Superior」といった進化版も登場しています。古き良きものを守りながら、革新を続ける。この姿勢が、シルヴァンを常に特別な存在にしているのです。
シルヴァンシリーズ 全モデル徹底解剖
それでは、ここからはシルヴァンシリーズの広大な世界を探検していきましょう。現在ラインナップされているモデルを、その特徴ごとに分類してご紹介します。
1. クラシック・ラインナップ(カップ&コーンベアリング仕様)
すべての基本となる、伝統的なモデル群です。メンテナンスをすることで長く使えるカップ&コーンベアリングが、自転車との対話を楽しくさせてくれます。
SYLVAN TOURING(シルヴァン ツーリング)

シリーズ中、最も大きな踏面を持つ両面踏みペダル。その名の通りツーリングに最適で、幅広なプラットフォームが長距離でも足の疲れを軽減します。ランドナーからクロスバイクまで、安定感を求めるならまずこのモデルです。
SYLVAN ROAD(シルヴァン ロード)

トゥクリップとの併用を前提とした、U字型のクラシカルな側板(がわいた)を持つ片面踏みペダル。クロモリロードやピストバイクに、これ以上ないほど美しくマッチします。コーナーリング時の地面とのクリアランスも考慮された、走りのための形状です。
SYLVAN TRACK(シルヴァン トラック)

ロードよりもさらにコンパクトなボディと側板を持つ片面踏みペダル。トラック競技の急なバンクでも路面にヒットしにくいよう設計されています。そのミニマルなルックスは、街乗りピストカスタムの定番中の定番です。
SYLVAN STREAM(シルヴァン ストリーム)

トラックとほぼ同じコンパクトなボディを持つ両面踏みペダル。街乗りでのストップ&ゴーを繰り返すようなシーンで、ペダルの面を気にせず踏み込める手軽さが魅力。クロスバイクやミニベロのカスタムに最適です。
2. コラボレーション&スペシャルモデル
外部のブランドやカルチャーとの交流から生まれた、個性豊かなモデルたちです。
SYLVAN GORDITO & SUPER SYLVAN GORDITO(シルヴァン ゴルディート & スーパー)

アメリカの個性派バイクブランド「CRUST BIKES」のアイデアから生まれたモデル。「ゴルディート」はスペイン語で「ぽっちゃり」を意味する愛情のこもった言葉です。ツーリングの横幅はそのままに、踏面の前後長をぐっと広げた超幅広設計が特徴。これにより、スニーカーでも革靴でも、どんな靴でも包み込むような安定感を生み出します。足の大きな方はもちろん、長距離をリラックスして走りたいツーリングやバイクパッキングに最高の相棒です。さらにギザギザの歯を深くしてグリップ力を高めたのが「スーパー」です。
MASH STREAM WIDE(マッシュストリームワイド)

サンフランシスコの伝説的ピストクルー「MASH SF」とのコラボモデル。ストリームをベースに、片側の側板にトゥクリップをキャッチしやすい「キックバック(蹴り返し)」を追加。オールブラックで統一されたカラーリングと相まって、攻撃的でクールな印象を与えます。
3. 次世代の回転性能「NEXT」ラインナップ(トリプルシールドベアリング仕様)
伝統のフォルムはそのままに、心臓部であるベアリングを現代的にアップデートしたのが「NEXT」シリーズです。メンテナンスフリーでありながら、驚異的になめらかな回転を誇るトリプルシールドベアリングを採用。一度使えばその違いに誰もが驚くはずです。
- SYLVAN TOURING NEXT
- SYLVAN ROAD NEXT
- SYLVAN TRACK NEXT
- SYLVAN STREAM NEXT
これら4つのクラシックモデルそれぞれに、「NEXT」バージョンが存在します。見た目はクラシカルに、しかし性能は最先端を。そんな贅沢な要求に応えてくれるラインナップです。
4. 究極の利便性「Ezy Superior」システム
「NEXT」シリーズの性能はそのままに、工具なしで簡単にペダルを着脱できる三ヶ島独自の機構が「Ezy Superior」です。輪行や、室内保管でペダルが邪魔になる際に絶大な効果を発揮します。こちらも「NEXT」シリーズの各モデルで選択可能です。旅するサイクリストや、省スペース化を図りたい都市部のライダーにとって、これ以上ない機能と言えるでしょう。
まとめ
今回は、三ヶ島製作所のシルヴァンシリーズの世界を、その誕生の歴史から現在進行系の進化まで、駆け足で巡ってきました。
一つの製品シリーズが40年以上もサイクリストの足元で輝き続け、さらに新たなモデルを生み出しながら進化しているという事実は、単に「品質が良い」とか「デザインが普遍的」という言葉だけでは片付けられません。そこには、コンピューターの画面上では決して再現できない、職人の手の感覚、磨き上げられた金属だけが持つ重みと輝き、そして「滑らかに回る」という機能に真摯に向き合い続ける、日本のモノづくりの誠実な哲学が存在します。
僕がデザイナーとして、そして一人の自転車乗りとしてシルヴァンに強く惹かれるのは、まさにこの点です。デジタル化が進み、あらゆるものが効率化され、使い捨てが当たり前になっていく現代において、このペダルは「モノと長く付き合うことの豊かさ」を静かに、しかし雄弁に語りかけてきます。自分の手でベアリングの調子を確かめ、グリスアップする時間。それは自転車との対話であり、遠い埼玉の工場で働く職人たちへの敬意の表れでもあると、僕は思うのです。
ペダルは、エンジンである僕たちの身体と、愛すべき自転車とが直接触れ合い、力を伝えるための、最も重要で親密な接点です。もしあなたの愛車にまだ「これだ」と心から思えるペダルが見つかっていないのなら、一度、この日本の小さな名品に足を乗せてみてください。
きっと、いつもの道が少し違って見えるはずです。それは、あなたの自転車ライフを、より深く、味わい深いものへと変える、確かな一歩になるでしょう。
この記事を読んで、シルヴァンペダルについて感じたことや、実際に使っている方の感想など、ぜひ下のコメント欄で教えてください。皆さんの自転車の話を聞けるのを楽しみにしています!
それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!