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Cane Creek解体新書:革新を止めない、ノースカロライナの魂。母体はダイアコンペ!A-Headの開発、「ee」というハイエンドモデルの成り立ちとそのこだわりを徹底解説。

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は自転車の歴史において、一つの「革命」を起こしたブランドについて、その核心に迫ってみたいと思います。その名は**「Cane Creek(ケーンクリーク)」**。

多くのサイクリストが一度はそのロゴを目にしたことがあるでしょう。特にヘッドセットにおいては、業界のスタンダードを築き上げた偉大な存在です。しかし、彼らの真の魅力は、単に高性能なパーツを作っているというだけではありません。その製品一つひとつには、ライダーへの深い愛情と、ものづくりへの揺るぎない哲学、そして日本のとある老舗メーカーとの深い関わりが隠されています。

今回は、Cane Creekがどのようにして生まれ、自転車の世界にどんな衝撃を与えたのか。そして、彼らが今もなお、ノースカロライナの豊かな自然の中で育み続ける「革新の魂」とは何なのか。他のどの記事よりも深く、その物語を紐解いていきたいと思います。

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日本の血統、アメリカの魂:Cane Creek誕生の物語

Cane Creekの物語は、実は僕たちの国、日本と深く関わっています。そのルーツは、日本の老舗ブレーキメーカーである「株式会社ヨシガイ(Dia-Compe)」にあります。

1970年代から80年代にかけて、Dia-Compeは高品質なブレーキパーツで世界的な評価を得ていました。そして、アメリカ市場での拠点としてノースカロライナ州フレッチャーに工場を設立します。これが後のCane Creekの母体です。

時は流れ、大きな転機が訪れます。Dia-Compeのアメリカ事業部門がアメリカ資本となり「Dia-Compe USA」となった後、1995年に従業員たちがその事業を買い取り、独立を果たします。こうして**「Cane Creek Cycling Components」**が誕生しました。日本の優れたものづくりのDNAを受け継ぎながら、アメリカの自由な発想とライダー中心の文化の中で、彼ら自身の新たな物語が始まったのです。

彼らが本拠地を置くノースカロライナ州は、ピスガ国有林をはじめとする険しい山々と、美しいトレイルに恵まれた、まさにサイクリストの楽園。Cane Creekのエンジニアやスタッフたちは、自らが熱心なライダーとして、この恵まれた環境をテストフィールドに、日々製品開発に勤しんでいます。

そして、その豊かな自然との繋がりを象徴するのが、彼らのロゴマークにもなっている**サラマンダー(サンショウウオ)**です。実はこれ、トカゲじゃないんですよ。彼らが拠点とするアパラチア山脈は「世界のサラマンダーの首都」と呼ばれるほど、多様な生命が息づく場所。日々テストライドを行うトレイルで出会うこの小さな生命は、水の中でも陸でも生き抜くタフさと適応力の象徴であり、Cane Creekの製品哲学そのものを表しているかのようです。「自分たちが本当に使いたいものを作る」という、ライダーによる、ライダーのためのものづくり。これが、Cane Creekの揺るぎないスタンスであり、すべての製品に宿る魂なのです。

自転車の歴史を変えた革命:スレッドレスヘッドセット「A-HEAD」の衝撃

Cane Creekの名を自転車史に永遠に刻み込むことになったのが、1991年に発表された**スレッドレスヘッドセット「A-HEAD(アヘッド)」**です。 今では当たり前となったこのシステムですが、当時はまさに革命的な発明でした。

それまでの自転車のヘッドセットは「スレッド式」と呼ばれ、フォークコラムに切られたネジ(スレッド)で固定する方式が主流でした。しかしこの方式は、重量が重く、調整が難しく、剛性にも限界があるという課題を抱えていました。

Cane Creekが発表した「A-HEAD」は、この常識を根底から覆します。フォークコラムにはネジを切らず、ステムでコラムをクランプして固定するという、シンプルで画期的なアイデア。これにより、以下のような劇的な進化がもたらされました。

  • 大幅な軽量化: 複雑なネジ切り構造が不要になり、ヘッドパーツ全体の重量が劇的に軽くなりました。
  • 剛性の向上: ステムとフォークが一体化することで、ハンドリングの剛性が飛躍的に向上しました。
  • メンテナンス性の向上: 構造がシンプルなため、調整やメンテナンスが格段に容易になりました。

この「A-HEAD」システムの特許を取得したCane Creekは、名だたるブランドにライセンスを供与し、スレッドレスヘッドセットは瞬く間に業界のスタンダードとなりました。 この一つの発明が、現代のスポーツバイクの設計思想そのものを変えたと言っても過言ではありません。この歴史こそが、Cane Creekが単なるパーツメーカーではなく、「革新者」と呼ばれる所以なのです。

eeシリーズ:鬼才クレイグ・エドワーズが描く「究極」の世界

Cane Creekのラインナップの中でも、ひときわ異彩を放つプレミアムな存在、それが**「eeシリーズ」**です。このシリーズは、Cane Creekが2016年にパートナーシップを結んだ伝説的なエンジニア、**クレイグ・エドワーズ(Craig Edwards)**氏の名を冠した特別なプロダクト群です。

彼のブランド「ee cycle works」が生み出すパーツは、「常識を疑い、物理法則の限界に挑む」という彼の哲学そのもの。妥協なき軽量化と、機能性を突き詰めた末に生まれる工芸品のような美しさは、まさに究極。Cane Creekは、彼の才能に惚れ込み、その夢を形にするためのサポートを約束したのです。

eeBrakes

eeBrakes eeシリーズの代名詞であり、超軽量キャリパーブレーキの金字塔です。CNC加工を駆使した独創的なリンク構造は、一般的なハイエンドブレーキの約半分の重量でありながら、それを凌駕するほどの強力な制動力と、繊細なコントロール性を両立させています。僕のようなデザイナーの目から見ても、その造形はもはやアートの領域。機能美とは何か、その答えがここにあります。

eeWings

eeWings 魂を揺さぶる、チタン製クランクアーム。MTB用とロード/グラベル用の「All-Road」がラインナップされています。チタンという特別な素材を、美しい溶接と精密な加工で仕上げたこのクランクは、カーボンの軽さとクロモリの耐久性を併せ持つ、まさに究極の逸品。その価格も究極ですが、生涯にわたって使い続けられるほどの堅牢性と、他に類を見ない所有感は、何物にも代えがたい価値があります。

eeSilk

eeSilk Seatpost & Stem eeシリーズがもたらすのは、過激なパフォーマンスだけではありません。このeeSilkシリーズは、洗練された快適性を追求したサスペンションシートポストとステムです。後述するThudbusterよりもはるかに軽量でシンプルな構造ながら、最大20mmのトラベル量で路面からの微細な振動を吸収。クロモリロードやグラベルバイクの美しいシルエットを損なうことなく、ワンランク上の快適な乗り心地を実現してくれます。

Cane Creekを代表するプロダクト

eeシリーズ以外にも、Cane Creekの哲学を体現する素晴らしい製品たちが揃っています。

ヘッドセットを代表するプロダクト

110-Series(ワンテン) Cane Creekのフラッグシップモデルであり、ヘッドセットの最高峰です。**生涯保証(100% lifetime guarantee)**を謳うほどの圧倒的な耐久性と、驚くほど滑らかな回転性能を誇ります。高精度な7075 T-6アルミニウムをCNC加工で削り出し、自社製のプレミアムベアリングを搭載。まさに一生モノの相棒となりうる、究極のヘッドセットです。

40-Series(フォーティ) 110-Seriesの性能と信頼性を受け継ぎながら、より多くのサイクリストに届けるためにコストパフォーマンスを追求したモデル。Cane Creekの入門用として、あるいは日々のタフなライドの相棒として、最もバランスの取れた選択肢と言えるでしょう。僕のようなクロモリバイクのカスタムにも、気兼ねなく使える頼れる存在です。

HELLBENDER 70(ヘルベンダー70) 110と40の間に位置する、耐久性に特化したモデルです。その名の由来である「ヘルベンダー(アメリカオオサンショウウオ)」のように、水や泥に非常に強いステンレススチール製のベアリングを採用。雨天時の通勤や、過酷なグラベルライドなど、タフな環境でこそ真価を発揮します。

サスペンションシートポストを代表するプロダクト

Thudbuster(サドバスター) サスペンションシートポストの代名詞とも言える、ユニークなパラレルリンク機構を採用したモデルです。この機構により、路面からの衝撃を効率的に吸収し、ライダーのお尻への突き上げを劇的に軽減します。ハードテイルMTBやグラベルバイク、E-BIKEでの長距離ライドにおいて、これ以上ないほどの快適性を提供してくれます。エラストマー(緩衝材)を交換することで、ライダーの体重や好みに合わせて硬さを調整できるのも大きな魅力です。

まとめ:Cane Creekは、自転車への「愛」と「探求心」の結晶

ここまでCane Creekの物語を追ってきましたが、いかがでしたでしょうか。

彼らは、単に高性能なパーツを作るだけではなく、その一つひとつに明確な哲学と、ライダーへの深い愛情を込めています。日本のものづくりの精神を受け継ぎながら、アメリカの自由なカルチャーの中で独自の進化を遂げたCane Creek。彼らが「A-HEAD」で起こした革命は、今もなお、僕たちが乗るすべての自転車の中に息づいています。

僕がクロモリフレームの自転車を愛するように、Cane Creekのパーツにも、時代に流されない普遍的な価値と、長く使い続けることで深まる「味わい」があります。それは、効率やスペックだけでは測れない、自転車という趣味の最も豊かな部分なのかもしれません。

あなたの愛車にも、Cane Creekという「革新の魂」を宿らせてみてはいかがでしょうか。きっと、日々のライドがもっと楽しく、もっと特別なものになるはずです。

皆さんはCane Creekのパーツにどんな思い出がありますか?ぜひコメントであなたのストーリーを聞かせてください。

それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!

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Designer & Cr-Mo Freeks
中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れるアラフォーのクリエイター。 自転車のあれこれやニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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