必修科目:クリスキングに付いて。意外と知らない定番パーツブランドChris Kingの歴史

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。
僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。今回は、自転車乗りなら誰もが一度は耳にする、いや、むしろ「いつかは手に入れたい」と憧れを抱く、あの定番ブランドについて語りたいと思います。
そのブランドの名は、Chris King(クリスキング)。
「知ってるよ、高級パーツでしょ?」と思われた方も多いかもしれません。確かに値段は決して安くありません。しかし、彼らのプロダクトは、ただ高いだけじゃないんです。そこには、大量生産・大量消費とは一線を画す、深い哲学と、驚くほどの美しさが詰まっています。
今回は、僕なりの視点で、クリスキングがなぜ定番でありながら意外なほど奥深いのか、そしてなぜ多くの自転車乗りに愛され続けているのかを、皆さんと一緒に「必修科目」として紐解いていきたいと思います。
Chris Kingの物語:ポートランドで生まれた哲学
クリスキングの歴史は、今から約50年も前の1976年にまで遡ります。創業者であるクリス・キング氏が、当時の自転車業界に蔓延していた「使い捨て」の文化に反発し、もっと高性能で、一生涯使えるほど耐久性の高いヘッドセットを作りたいという情熱から、会社を設立しました。
面白いのは、彼らがもともと医療機器やミサイル兵器の部品を製造していた、非常に精密な金属加工技術を持っていたこと。その妥協なき精度へのこだわりを、自転車という平和な乗り物のパーツ作りに惜しみなく注ぎ込んだんです。クリス氏自身も、自転車パーツを作る仕事に「誇り」を感じていたと語っています。
彼らの製造哲学は、創業以来今日まで一貫して変わりません。
- Made in USA:アメリカ、オレゴン州ポートランドにある自社工場で、全てのパーツを一貫生産しています。設計から切削、アルマイト加工、そして組み立てまで、全てを目の届く範囲で行うことで、製品の品質を徹底的に管理しているんです。
- 妥協なき精度:彼らは自社製のベアリングに絶対的な自信を持っており、「ベアリング屋」と自称するほどです。パーツを製造する分だけベアリングも自社で作るという徹底ぶりは、まさに職人技。その品質への揺るぎない自信の現れとして、2019年からは製品に「生涯保証」まで付けています。
- 環境への配慮:ただ良いものを作るだけでなく、製造過程で出る金属の削り屑を全てリサイクルしたり、再生可能エネルギーを利用したりと、環境への負荷を最小限に抑える努力を続けています。彼らの哲学は、製品そのものだけでなく、ものづくり全体にまで及んでいるのです。
なぜChris Kingは特別な存在なのか?プロダクトの秘密
僕がデザイナーとして彼らのプロダクトに惹かれる理由は、その徹底した哲学が、製品の「美しさ」に直結しているからです。
1. 職人技が光るプロダクトの秘密
クリスキングのパーツは、見た目の美しさもさることながら、触って、使ってみて、初めてその真価がわかります。
例えば、僕のCrust Evasionのハブに使われている独自の**「RingDrive™」**システム。この72ノッチのラチェットシステムは、ペダルに少しでも力を加えた瞬間に、カチカチという心地よい音と共に、その力を瞬時に後輪に伝えます。この一切の遊びを感じさせないダイレクトな感覚は、一度味わうと他のハブには戻れなくなるほどです。
また、自社で製造されるベアリングの滑らかさは、まるで無重力のようにホイールを回転させます。指で軽く押すだけで、いつまでも回り続けるんじゃないかと思うほどのスムーズさは、まさに精密加工技術の賜物。工業製品としての究極の機能美が、そこにはあります。
2. 自転車に個性を与えるカラーリング
クリスキングの最大の魅力の一つが、その豊かなカラーバリエーションです。定番色に加えて、毎期発表される限定色は、世界中の自転車乗りの間で大きな話題になります。
限定色には、単なる流行の色ではなく、自然や歴史からインスピレーションを得て選ばれるという、一つ一つに深い物語があります。例えば、最近の限定色である「Matte Jade」は、まるで翡翠のような深い緑がかった青で、自転車の雰囲気を一気に特別なものに変えてくれます。
ヘッドセット、ハブ、ボトムブラケットと、全てのパーツで色が統一できるため、まるでキャンバスに絵を描くように、自分だけのカラーコーディネートを楽しめます。彼らのパーツを選ぶことは、自分だけの「作品」を作ることに等しいのです。
3. 一生ものとしての哲学:究極の耐久性と生涯保証
クリスキングのパーツは、「消耗品ではない」という哲学に基づいて作られています。
彼らは、ただ頑丈に作るだけでなく、メンテナンスを前提とした設計を徹底しています。ハブやヘッドセットのベアリングは、専用の工具を使えばグリスアップが可能で、きちんと手入れをすれば何十年も使えるんです。
そして、2019年から始まった「生涯保証」。これは、初期不良だけでなく、通常の使用で起こる故障であれば、購入した人がオーナーである限り、何度でも無償で修理・交換してくれるという、驚くべき制度です。これほど大胆な保証ができるのは、自社製品に対する絶対的な自信の現れに他なりません。
新しいものを次々と買うのではなく、一つのものを大切に使い続ける。クリスキングは、この日本の文化に通じる哲学を、プロダクトを通して体現しているんです。
日本とChris King:愛され続ける理由
クリスキングは、なぜ日本の自転車乗りにこれほどまでに愛されているのでしょうか?
正確な日本上陸時期は分かりませんが、彼らの哲学は、精巧で高品質なものを尊び、ものを大切にする日本の文化と非常に相性が良いんだと思います。
「職人技」「用の美」「長く使えるものを愛でる心」。これらは、日本のモノづくり文化に深く根付いた価値観です。クリスキングの「一生使えるプロダクトを作る」という哲学は、まさに日本の自転車乗りの心を掴んで離さない理由なんだと僕は感じています。
特に、東京のBlue Lugをはじめ、特定のカルチャーショップとの強い結びつきも大きいでしょう。彼らのショップでは、クリスキングのパーツが単なる商品としてではなく、その背景にある物語や美学を込めて紹介されています。単に売るだけでなく、そのブランドが持つ世界観を伝えることで、多くのファンを生み出しているのです。
僕が愛してやまないChris Kingのプロダクトたち
彼らのプロダクトは多岐にわたりますが、ここでは特に代表的なパーツをいくつか紹介させてください。
1. ヘッドセット:ブランドの代名詞
「ヘッドと言えばキング」と言われるほど、クリスキングの代名詞となっているのがヘッドセットです。 ハンドルの操作性やベアリングの回転性能は、ヘッドセットの精度に大きく左右されます。彼らのヘッドセットは、独自のベアリングと精密なカップの削り出しによって、想像を絶する滑らかなハンドリングを実現します。種類も豊富で、昔ながらのスレッドレスタイプ「NoThreadSet™」から、最近のフレームに多いインテグレーテッドタイプ「DropSet™」まで、あらゆる規格に対応しているのも魅力です。
2. ハブ:心臓部に宿る職人技
ハブは、自転車の動力源となる重要なパーツです。 クリスキングのハブは、独特なラチェット音と、そのトルク伝達性能で知られています。内部の「RingDrive™」システムは、ペダルを踏んだ力を瞬時に後輪に伝えます。この一切の遊びがないダイレクトな感覚は、他のハブでは味わえないもの。僕のCrust Evasionもこのハブを使っていますが、登坂時の力強い加速感は、このハブなくしては語れません。
3. ボトムブラケット:縁の下の力持ち
ペダリングの滑らかさを決めるボトムブラケット。 クリスキングのBBは、自社製の高品質なベアリングによって、驚くほどスムーズな回転を実現します。ペダリングの軽さや、メンテナンス性の高さも大きな強みです。シマノのクランクなど、様々なクランク規格に対応するために、専用のコンバージョンキットも用意されているので、多くの自転車でその性能を体感することができます。
僕の自転車とChris King
僕のCrust Evasionは、先日の記事でも紹介したように、ワゴンセールで買ったステムや、親父に買ってもらった古いクランクなど、様々な「物語」のあるパーツで組まれています。
そんな中で、ヘッドセットにはクリスキングを選びました。
自転車は使えば必ず傷がつき、古くなっていきます。でも、クリスキングのパーツは、使い込まれることで「ヤレ感」という歴史が加わり、その存在感を増していきます。まるで、人生を共に歩む相棒のように。
クリスキングは、単なる高級パーツではありません。それは、僕たちの自転車に命を吹き込み、物語を刻み、一生の相棒へと育てるための、最高のパーツなんです。
「世界にたった一つ」の自分だけの自転車を組むなら、クリスキングは最高の選択肢の一つだと僕は思います。
皆さんは、クリスキングのパーツにどんなイメージを持っていますか?ぜひ、あなたのクリスキングに対する思いをコメントで教えてほしいです。
それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!
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