自転車うんちく系

伝説のサドル「セライタリア・フライト」が時代を超えて愛される理由:僕の偏愛と歴史を巡る旅

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けている37歳、デザイナーの僕です。

日々の通勤路、いつものコーヒー豆を買いに行く道、そして週末の少し長めのライド。クロモリのしなやかなフレームと、カチッとした変速音が僕の日常に欠かせないリズムを与えてくれます。自転車は僕にとって、単なる移動手段ではありません。それは、日々の冒険を彩る最高の相棒であり、自分の手でパーツを選び、カスタマイズしていく過程もまた、大きな喜びです。街に止まっている自転車のパーツやフレームのチェックをついついやってしまうのも、この探求心が満たされる瞬間だからかもしれません。

今回は、そんな僕の自転車の土台を支えてくれている、セライタリアの「フライト(Flite)」サドルについて語ってみたいと思います。実は僕、モデル違いで2つも持っているほどのフライト愛好家。街で見かける自転車のパーツをチェックしてしまう僕の好奇心をこれほどまでに満たしてくれるサドルは、他にありません。フライトというサドルが、なぜ時代を超えてこれほどまでに多くのサイクリストに愛され続けているのか、その魅力と歴史を深掘りしていきたいと思います。

1990年、フライト誕生のバックストーリー:軽量化という名の革命

フライトが初めて世に放たれたのは、1990年のこと。当時、自転車の世界は新たな技術革新の波に乗り始め、より速く、より効率的に走るための機材が求められていました。それまでのサドルは、クッション性や快適性を重視したものが主流で、重量はあまり重要視されていませんでした。しかし、セライタリアはそうした常識を打ち破り、自転車界に「軽量化」という名の革命をもたらしました。

当時のフライトの重量は、なんと200g台。これは、それまでのサドルでは考えられないほどの軽さでした。フライト以前にも、セライタリアは1980年に初の解剖学に基づいたサドル「TURBO」を発表していましたが、フライトはさらに一歩進んだ、全く新しい概念のサドルでした。この革新的な軽さは、単に素材を軽くしただけではありません。サドルを構成する要素を徹底的に見直し、パッドを必要最低限に抑え、シェルの形状を大胆にスリム化することで実現されました。

サイドが大きくくり抜かれたような細身のノーズと、後方が平らで広い座面のデザインは、当時のサイクリストに衝撃を与えました。このシャープなシルエットこそが、フライトが今日まで続くクラシックなデザインの原型となり、多くのブランドに影響を与えることになります。このフライトの登場は、サドルに対する考え方を根本から変えました。それまでは「座り心地」が最優先だったサドル選びに、「軽量性」という新たな価値観が加わったのです。プロレーサーはもちろん、アマチュアレーサーたちもこぞってフライトを愛用し、その人気は不動のものとなっていきました。フライトは、単なるパーツではなく、自転車という乗り物の性能を向上させるための重要なツールとして認識されるようになったのです。

フライトの誕生は、自転車界の歴史におけるターニングポイントでした。それは、サドルが単なる座席ではなく、パフォーマンスを左右するコンポーネントの一部であるという認識を確立させました。

ライバルとの比較:コンコールとフライト、その違いが物語る哲学

フライトの魅力を語る上で、同じくイタリアのサドルメーカーが輩出した名作「コンコール(Concor)」について触れないわけにはいきません。コンコールはフライトより前の世代で、同じく多くのプロ選手に愛された伝説的なサドルです。特にロードレースの世界では、多くのトップ選手がコンコールを愛用していました。

コンコールは、サドルの中央部が凹んだ独特の形状が特徴です。これにより、ペダリング中に座る位置が定まりやすく、高いケイデンスを維持しやすいというメリットがありました。コンコールは、一度座ったら動かずに効率的にペダリングする、というスタイルを求めるライダーに支持されました。まるで、競輪選手が固定されたポジションで力を伝えるように、ライダーをサドルにしっかりとホールドする哲学があったのです。そのデザインは、力強く、そしてダイナミックなペダリングを支えるために特化していました。

一方、フライトは座面の自由度が高く、ライダーが座る位置を前後にずらすことで、多様な乗車姿勢に対応できる設計でした。日々の通勤やロングライドでは座面の後ろにどっしりと座り、上り坂やスプリント時にはノーズに腰を移動させて力を入れる。フライトは、ライダーの動きに柔軟に対応してくれる、まさに「相棒」のような存在なのです。僕がフライトを好きな理由の一つもここにあります。僕の愛車であるクロモリのEvasionは、通勤からツーリングまで様々な用途で使います。フライトは、どんなシチュエーションでも僕のライディングスタイルに合わせてくれる、懐の深いサドルなんです。

コンコールが「定位置での効率的なペダリング」を追求するサドルだとすれば、フライトは「あらゆる状況に対応できる自由なライディング」を可能にするサドルだと言えるでしょう。どちらが優れているということではなく、乗り手のスタイルや哲学を明確に反映しており、サドル選びが単なるパーツ選びではないことを教えてくれます。この二つのサドルは、イタリアのサドルメーカーが追い求めた二つの異なる理想の結晶なのです。

現代に蘇るクラシックデザイン「フライト・ボニー」:僕の心を掴んだもう一つのフライト

ユーザーさんがおっしゃる「ボニー」というモデルについて、僕も以前から気になっていました。これは、セライタリアの「MILANO FLITE BONNIE」というモデルのことで、フライト1990をベースにヴィンテージ感を加えた特別なモデルです。

フライト・ボニーは、美しい本革のトップカバーと、クラシックなデザインを支えるチタン製のレールが特徴です。重量はフライト1990と同じく約230gと軽量でありながら、レザーの質感が持つ独特の風合いは、僕の愛車であるクロモリフレームの自転車にとても似合いそうです。このレザーのトップカバーには、シートのようなステッチが施されており、デザインのアクセントになっています。創業当時のブランド名「SELLA ITALIA」の綴りが再現されているのも、クラシック好きにはたまらないポイントです。

ただ単に昔のモデルを復刻するだけでなく、現代の技術で素材や細部の仕様をアップデートし、美しさだけでなく乗り心地も追求しているところに、セライタリアのサドルに対する深い愛情を感じます。この「MILANO」シリーズは、まさにクラシックとモダンの融合。街で見かけるヴィンテージバイクにも、こうしたモダンなクラシックサドルは相性が良さそうで、ついついパーツをチェックしてしまう僕の好奇心をくすぐります。僕が持っているもう一つのフライトも、このクラシックなデザインに惹かれて手に入れたものです。新しい技術を取り入れつつも、ルーツを大切にする。フライトの歴史と哲学が凝縮されたモデルだと言えるでしょう。

重量と素材:フライトの進化と哲学

フライトは軽量化のパイオニアでしたが、それは単に軽いだけでなく、プロの過酷なレースにも耐えうる耐久性を兼ね備えていました。初代フライトのレールにはチタンチューブが採用され、軽量でありながらも高い強度を誇っていました。

僕が持っている2つのフライトも、レールの素材は異なりますが、どちらも軽量で剛性が高いのが特徴です。サドルの乗り心地は、シェルのしなり具合やパッドの硬さだけでなく、レールの素材や太さも大きく影響します。フライトに使用されるレールには、様々な種類があります。

  • チタンレール: フライト1990などに採用されている素材。軽量でありながら適度なしなりを持ち、路面からの振動を吸収してくれます。クロモリフレームのようにしなやかな乗り味を好む僕には、非常に魅力的な素材です。

  • Ti316レール: モリブデンを含有したステンレスチューブにチタンを添加した素材。チタンレールよりも強度と耐久性が向上し、コストパフォーマンスに優れています。

  • マンガネーゼレール: マンガンを添加したクロムモリブデン鋼の中空レール。軽量化と柔軟性のバランスが取れており、多くのミドルグレードのサドルに採用されています。

  • カーボンレール: 最も軽量な素材。剛性が高く、ダイレクトな乗り味を求めるレーサーに好まれます。

フライトの進化は、レールの素材にも現れています。初代のチタンから始まり、現在ではカーボンやマンガネーゼといった様々な素材のレールがラインナップされています。また、パッドの素材や形状も進化し、近年では「FLITE BOOST」というショートノーズタイプのモデルも登場しました。これはフライトの哲学を現代のトレンドに合わせて再解釈したもので、よりエアロダイナミクスを意識した前傾姿勢に対応しています。これらの進化は、時代のニーズに合わせて常に最高のサドルを追求してきたセライタリアの姿勢そのものです。

フライトが持つ「普遍性」という魅力:なぜ今も愛され続けるのか

フライトは、その後も技術革新に合わせて様々なモデルチェンジを重ねてきました。しかし、その根底にある「軽量」「スリム」「快適」という哲学は変わっていません。そして何よりも、フライトが愛され続ける最大の理由は、そのデザインの「普遍性」にあるのではないでしょうか。

シンプルで無駄のないフォルムは、クロモリフレームのロードバイクにも、最新のカーボンバイクにも、そして僕の愛車のようなグラベルバイクにも違和感なく溶け込みます。流行に左右されないそのデザインは、どんな自転車にもマッチし、そのバイクの個性を引き立ててくれます。これは、デザイナーである僕にとって、非常に重要なポイントです。良いデザインとは、時代を超えても色褪せないもの。フライトはまさに、その良いデザインの典型例だと言えるでしょう。

街で止まっている自転車のフライトを見かけると、思わずオーナーに話しかけたくなります。きっとそのサドルには、その人の自転車に対する想いや、数々の旅の思い出が詰まっているはずだからです。フライトは、単なるパーツではなく、サイクリスト一人ひとりの物語を支える、大切な存在なのです。

まとめ:フライトは僕たちの「好き」を形にしたサドル

セライタリア・フライトは、軽量サドルのパイオニアとして自転車界に大きな影響を与え、今もなお多くのサイクリストに愛され続けている名作サドルです。その歴史、革新性、そして普遍的なデザインは、僕たち自転車好きの「好き」という感情を揺さぶり、自転車のある暮らしをより豊かにしてくれます。

僕もまた、2つのフライトサドルと共に、これからも日々の冒険を楽しんでいきたいと思います。通勤中に見かける魅力的な自転車に思わず足を止め、パーツやフレームのチェックをしながら、次のカスタムのアイデアを練る。そんな僕の日常には、フライトがいつも寄り添ってくれています。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!ヒロヤスでした!

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Hrys Basics(ひろやす)
Hrys Basics(ひろやす)
Designer & Cr-Mo Freeks
中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れる30第半ばのクリエイター。 海外の自転車ニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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