自転車うんちく系

冒険の守護神、SURLY Troll。異常なまでのタフさと、魂を宿したヘヴィ・ツーリングバイク。

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。今回は、僕が心底惚れ込んでいる、ある特別な自転車について語りたいと思います。それは、もはや単なる自転車のフレームを超越した存在、SURLYのTroll(トロール)です。

トロールという名前を聞いて、何を想像しますか?北欧神話に登場する、山や洞窟に住む、ちょっと気難しいけれど、どこか愛嬌のある存在。まさしく、このフレームはそんなキャラクターを体現しています。カーボンやエアロといった最先端のトレンドとは無縁の、頑丈で、飾り気のない、しかし圧倒的な信頼感を持つこのフレームは、多くの冒険家や旅人を魅了してきました。

巷にはトロールに関する情報がたくさんありますが、そのほとんどが「タフ」「万能」といった言葉で片付けられてしまいがちです。しかし、デザイナーとして、そして一人の自転車乗りとして、僕はトロールの深層にある、メーカーや設計者が込めた本当の思いを、他のどの記事よりも深く、皆さんに伝えたいと思います。

残念ながら、このトロールは今、生産が終了しています。しかし、そのことが、このフレームをさらに特別な存在にしています。それは、単なる過去の遺物ではなく、これからも僕たちの心の中で生き続ける、冒険の守護神なんです。

さあ、僕と一緒に、トロールが持つ物語の扉を、奥深くまで開いていきましょう。


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Trollの核心:その歴史と、受け継がれた魂

トロールを理解するには、まずその誕生の背景を知る必要があります。SURLYは、最初期から「シンプルでタフな自転車」という哲学を貫いてきました。特に、Cross-CheckやPugsleyといったフレームは、その後の自転車カルチャーに大きな影響を与えています。

トロールは、彼らが長年培ってきた「冒険と汎用性」の哲学を、26インチという規格で最大限に体現するために生み出されました。26インチという規格は、かつてのMTBの主流であり、今でも世界中の僻地で最も手に入りやすいタイヤサイズです。この選択は、まさにサーリーの「どこへでも行ける」というコンセプトを象徴しています。

トロールという名前には、いくつかの意味が込められていると僕は解釈しています。一つは、「Troll」が神話の生き物であるように、山や森といった自然の中で真価を発揮する存在であること。もう一つは、「Trolling」、つまり釣り用語で「トローリング」という、餌を付けて船を走らせる漁法のように、荷物を満載してどこまでも旅を続ける姿。そして、もう一つは、インターネットスラングで使われる「トロール」、つまりはぐれ者や異端児という意味です。

カーボン全盛の時代に、あえて頑丈で重いクロモリフレームにこだわり、ロードバイクでもMTBでもない、独自のジャンルを確立したこのフレームは、まさに「異端児」でした。でも、僕たちはその異端児っぷりに惹かれ、そして彼を相棒として迎え入れたのです。

トロールは、ただのMTBでも、ツーリングバイクでもありません。それは、僕たちが「どこへでも行ける」という無限の可能性を秘めた、生きるための道具であり、最高の相棒でした。


ジオメトリが語るトロールの真実

ここからは、トロールの設計思想を、具体的な数字から読み解いていきます。ジオメトリ表は、フレームの性格を最も雄弁に物語る設計図です。僕がデザイナーとして物事の本質を読み解くように、トロールのジオメトリを深く掘り下げていきましょう。

SURLY Troll ジオメトリ表

Frame SizeSeat Tube C-TTop Tube Horiz. (mm)Head Tube Angle (deg)Seat Tube Angle (deg)BB Drop (mm)Chainstay (mm)Wheelbase (mm)Standover (mm)
S41056569.572.5504401045741
M46058569.572.5504401065772
L51060570.072.0504401085800
XL56062570.072.0504401105829

ジオメトリから読み解くトロールの特徴

1. チェーンステー長(440mm) トロールのチェーンステー長は、全サイズ共通で440mmです。これは、一般的なMTBやロードバイクに比べると非常に長く、ツーリングバイクの設計思想に近いです。この長いチェーンステーは、荷物を積んだ際の安定性を格段に高め、ふらつきを抑える効果があります。また、リアキャリアやパニアバッグを装着した際にも、かかととバッグが干渉するのを防いでくれます。

2. ヘッドチューブアングル(69.5〜70.0度) トロールのヘッドチューブアングルは、かなり寝かせた角度になっています。この設計は、オフロードでの安定性を高め、下り坂や荒れた路面でも、ハンドルが急に切れることなく、どっしりと直進する安心感を与えてくれます。また、重い荷物を積載したフロントの安定にも寄与し、まさにツーリングフレームとしての真価を発揮します。

3. BBドロップ(50mm) ボトムブラケット(BB)の位置が、ホイールの中心線からどれだけ下に下がっているかを示すBBドロップは、トロールでは50mmと、比較的浅く設定されています。これは、オフロードでのペダルヒットを防ぐための設計です。岩や木の根といった障害物を乗り越える際に、ペダルが地面に当たりにくく、ライダーに安心感を与えてくれます。


フレームスペックを読み解く:トロールの「なぜ」に迫る

ジオメトリだけでなく、フレームの素材や各部のスペックにも、トロールの哲学が詰まっています。

フレーム素材:4130 CroMoly Steel トロールに使われている4130クロモリは、自転車フレームの素材としては非常に信頼性が高く、その圧倒的なタフさは、世界中の僻地を旅する冒険家たちによって証明されてきました。アルミやカーボンにはない、クロモリ特有の「バネ感」は、長時間のライドでもライダーの疲労を軽減してくれます。

ドロップアウト:Versa-dropout(バーサ・ドロップアウト) トロールのリアエンドは、サーリー独自のバーサ・ドロップアウトを採用しています。これは、シングルスピードや内装変速、ロード変速など、様々な駆動方式に対応できるだけでなく、ディスクブレーキキャリパーがチェーンステー内側に配置されることで、リアキャリアを簡単に装着できるようになっています。さらに、トレーラー用のマウントも備えており、文字通り「何でもできる」汎用性を実現しています。

ブレーキ:ディスクブレーキ&Vブレーキ台座 トロールは、ディスクブレーキとVブレーキの両方に対応した台座を備えています。これは、世界中のあらゆる場所で、どんなパーツでも修理や交換ができるようにという、サーリーの哲学が詰まった設計です。僻地でディスクブレーキのパーツが手に入らなくても、Vブレーキの台座があれば、とりあえず走ることができます。この究極の汎用性は、僕たちクロモリ愛好家が最も求める信頼性そのものです。

タイヤクリアランス:26インチ x 2.7インチ トロールは、26インチで最大2.7インチ幅のタイヤを装着できるクリアランスを持っています。これは、MTB用の極太タイヤも履かせられることを意味します。これにより、砂地や雪道といった悪路でも、圧倒的なグリップ力と走破性を手に入れることができます。


ヒロヤス的おすすめビルド:トロールとの冒険へ

僕がもし今からトロールを組むとしたら、どんなパーツを選ぶか。デザイナーとして、そして日々の通勤や旅を楽しむ一人の自転車乗りとして、僕なりの理想のビルドを紹介します。よりラフなライドを楽しみたいという思いを込めて、パーツを見直してみました。

【クランクセット】Shimano Deore M6100 クラシックなフレームにはクラシックなパーツも良いけれど、タフで実用的なライドを求めるなら、シマノのMTBコンポーネント、Deoreが最適です。特に、最新のM6100シリーズは、上位グレードのテクノロジーが惜しみなく投入されていて、信頼性とコストパフォーマンスのバランスが最高です。シンプルでトラブルの少ないフロントシングル(1×12)の構成は、旅先でのトラブルを最小限に抑えてくれます。

【コンポーネント】Shimano Deore M6100 耐久性と信頼性を最優先に考えるなら、シマノのMTBコンポーネント、Deoreが最適です。特に、トラブルが少なく、ワイドなギア比を持つ1×12の構成は、トロールの冒険心を最大限に引き出してくれます。

【ホイール】WTB KOM Light i25 & Shimano XT Hub リムには、耐久性と軽量性を両立したWTBのKOM Light i25を、ハブには信頼性の高いシマノのXTハブを選びます。この組み合わせは、タフなオフロードでも安心して走れる、まさに冒険のためのホイールです。

【タイヤ】MAXXIS Minion DHF & DHR II よりラフなトレイルや下りを楽しむなら、MAXXIS(マキシス)のタイヤが最強の選択肢です。フロントには、どんな路面でも優れたグリップを発揮するMinion DHFを、リアには、制動力と駆動力を高めるDHR IIを組み合わせます。この組み合わせは、もはやトレイルライドの定番であり、トロールの眠れるMTBとしてのポテンシャルを最大限に引き出してくれます。サイズは、トロールのクリアランスを活かして、太めの2.3インチ〜2.5インチあたりを履かせるのが、ヒロヤス的理想です。

【ハンドル】Nitto B809AA SSB Riser Bar ゆったりとしたポジションで、景色を楽しみながら走るなら、日東のB809AAのようなライザーバーがおすすめです。美しい曲げ加工は、まさに日本のクラフトマンシップを感じさせます。

トロールは、完成された形で乗るのも良いですが、パーツ一つひとつを吟味し、自分だけの「相棒」を創り上げていくプロセスこそが、このフレームの最大の魅力です。毎日通勤で乗る自転車だからこそ、そのカスタムに、僕は心を込めます。街に止まっているトロールを見かけると、ついついどんなパーツが使われているのかチェックしてしまうのは、僕だけではないはずです。

まとめ:トロールが持つ、終わりなき物語

SURLY Trollは、ただの自転車ではありません。それは、時代を超えて受け継がれたSURLYの哲学、設計者の緻密な計算、そして何よりも、僕たち自転車乗りの自由な心を体現した、生きた物語なんです。

残念ながら、トロールは生産を終了しました。しかし、彼が残してくれた「何でもできる自由」という伝説は、これからも僕たちの心の中で語り継がれていきます。

もしあなたが、日々の通勤から週末の冒険まで、一台で全てをこなせる「最高の相棒」を探しているなら、そしてもし、どこかでトロールに出会えたなら、それは最高の出会いとなるでしょう。

この記事が、あなたの次の相棒を見つける旅の、少しでもヒントになれば幸いです。もしあなたがトロールを愛する一人だったなら、そして次に乗りたい自転車が決まったなら、ぜひコメントで教えてください。

それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!

【取扱店舗情報】 Surly(サーリー)の自転車に出会える日本のショップ

Surlyの自転車は、独自のスタイルと哲学を持つショップで取り扱われていることが多いです。ここでは、日本全国の代表的なSurly取扱店をいくつかご紹介します。

関東
中部
関西
中国
四国
九州
北海道
沖縄
  • 店舗名: Blue Lug (ブルーラグ)
  • 地域: 東京都
  • 自転車を愛する人々が集まる、東京を代表するカスタムバイクショップ。Surlyをはじめとする個性的なブランドを多数扱い、独自のセンスで組み上げられた自転車は多くのファンを魅了しています。パーツの品揃えも豊富で、気軽に相談できる雰囲気も魅力です。
  • 公式ホームページ: https://bluelug.com/
  • 店舗名: Circles (サークルズ)
  • 地域: 愛知県
  • 名古屋を拠点に、自転車文化の発信地として知られるショップ。Surlyの魅力を深く理解し、ライフスタイルに合わせた提案をしてくれます。併設されたカフェ「Earlybirds Breakfast」も人気で、自転車好きのコミュニティスペースとしても機能しています。
  • 公式ホームページ: https://www.circles-jp.com/
  • 店舗名: Movement (ムーブメント)
  • 地域: 大阪府
  • 大阪市内に店舗を構える、カスタムバイクのプロショップ。Surlyの魅力を深く理解しており、ユーザーのスタイルや用途に合わせたオリジナルの1台を丁寧に組み上げてくれます。街乗りから本格的なツーリングまで、Surlyの多様な楽しみ方を提案してくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: https://movement-cycle.com/
  • 店舗名: grumpy (グランピー)
  • 地域: 広島県
  • 広島県で長年Surlyを取り扱っている老舗ショップ。独自のイベントやライド企画も盛んで、Surlyを通じて広がる自転車の楽しみ方を提案しています。バイクパッキングやグラベルライドなど、Surlyの魅力を最大限に引き出すカスタムを得意としています。
  • 公式ホームページ: https://ride.grumpy.jp/
  • 店舗名: サイクルハウス ウエスタン
  • 地域: 愛媛県
  • 愛媛県にあるスポーツバイクショップ。Surlyの魅力を深く理解しており、グラベルロードやツーリングバイクなど、幅広いモデルの提案を得意としています。カスタムの相談にも親身に乗ってくれるので、安心して任せられます。
  • 公式ホームページ: https://www.ch-western.com/
  • 店舗名: 正屋 (MASAYA)
  • 地域: 福岡県
  • 福岡市にあるスポーツバイク専門店で、Surlyの取り扱いも豊富。ロードバイクやマウンテンバイクはもちろん、ツーリングや通勤に使えるSurlyの楽しみ方を提案してくれます。親しみやすい雰囲気も特徴です。
  • 公式ホームページ: https://www.masaya.com/
  • 店舗名: chillnowa (チルノワ)
  • 地域: 北海道
  • 函館市を拠点とする自転車ショップ。雪国ならではのファットバイク文化を牽引しつつ、様々なSurlyのバイクを扱っています。個性的なカスタムを得意とし、Surlyを遊び倒すスタイルを提案してくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: http://www.chillnowa.com/
  • 店舗名: TairaCycle (タイラサイクル)
  • 地域: 沖縄県
  • 沖縄県北谷町にある自転車ショップ。Surlyの正規取扱店として、レースから街乗りまで幅広いニーズに対応しています。沖縄の美しい景色をSurlyで楽しむための提案をしてくれるでしょう。
  • 公式ホームページ: https://www.tairacycle.com/

記事を読んでSurlyの自転車が気になったら、是非近くのお店に足を運んで実物を見たり、試乗車があれば体験させてもらうのもいいですね!
※上記は代表的な店舗の一部です。最新の取扱状況や在庫については、各店舗のホームページやSNSをご確認いただくか、直接お問い合わせください。

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中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れる30第半ばのクリエイター。 海外の自転車ニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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