メーカー紹介

「前カゴ」の大定番WALD。自転車乗りの日常に溶け込む、バスケット社のヒストリーをお伝えします。

hrysbasics

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕たちの自転車生活に欠かせない、あのカゴ。そう、WALD(ウォルド)のバスケットについて、その背景を深く掘り下げてお伝えしたいと思います。

街を走っていると、本当によく見かけるWALDのバスケット。コミューターバイクから、本格的なバイクパッキング仕様のグラベルロードまで、実にさまざまな自転車に、まるで昔からそこにあったかのように自然に装着されていますよね。この「当たり前」の風景を作っているWALDが、一体どんな歴史を持ち、どんな哲学でモノづくりをしているのか。そのストーリーを知ると、自分の自転車に取り付けたバスケットが、もっと特別な存在に見えてくるはずです。今回は、そんなWALDの魅力の核心に迫っていきます。

スポンサーリンク

始まりはバスケットではなかった。100年を超えるWALDの歴史

WALDと聞けば、僕たちはすぐにあの金属製のワイヤーバスケットを思い浮かべますが、意外にも彼らの最初の製品はバスケットではありませんでした。

物語の始まりは1905年、アメリカのウィスコンシン州シボイガンという街。創業者のエワルドおじいさんとハーマンおじさん(創業者一族の愛称のようです)が最初に特許を取得したのは、なんと自転車のタイヤリペアツールだったそうです。あのヘンリー・フォードが自動車の「T型フォード」を世に送り出すよりも前の話だというから、その歴史の長さに驚かされます。

このリペアツールが成功を収め、彼らの事業は順調に滑り出します。そして、兄弟は自転車という乗り物の可能性に、新たなビジネスチャンスを見出しました。それが、僕たちが知る「自転車用バスケット」の開発です。

ケンタッキー州メイズビルへ。アメリカの自転車産業を支えた日々

事業の拡大を目指した彼らは、1924年にケンタッキー州のメイズビルに移転します。オハイオ川のほとりにあるこの街が、現在のWALDの本拠地となりました。

そこからのWALDの成長は、アメリカの自転車産業の歴史そのものと重なります。第二次世界大戦中には、国の要請を受けて軍需品を製造し、その生産能力と信頼性から軍の賞を受賞したというエピソードも。そして戦後、自転車がアメリカの一般家庭に普及していく中で、WALDはハフィーやマレーといった国民的な自転車ブランドのハブ、クランク、ハンドルバー、キックスタンドなど、多岐にわたるパーツを供給する巨大メーカーへと成長していきました。

最盛期には、何千万台もの自転車にWALDのパーツが使われていたといいます。まさに、アメリカの自転車文化を根底から支えてきた存在だったのです。

華美ではない、実直なモノづくり。「Made in U.S.A.」の誇り

多くのメーカーが生産拠点を海外に移していく中でも、WALDは「Made in U.S.A.」を貫き、ケンタッキー州の工場で製品を作り続けています。彼らの製品哲学は、とてもシンプルで明快です。

「実用的で、丈夫で、長持ちすること」

WALDのバスケットには、過剰な装飾はありません。しかし、その溶接の丁寧さ、風の抵抗を考えられたメッシュの構造、荷物を効率よく積める四角いデザインなど、細部にまで実用性に基づいた工夫が凝rasされています。デザイナーの視点から見ても、この機能から生まれた形には、揺るぎない美しさが宿っていると感じます。

この実直さこそが、WALDが世界中のサイクリストから信頼され、自転車のある風景に自然に溶け込んでいる理由なのでしょう。

日本の自転車シーンとWALD

WALDのバスケットがいつ頃から日本で広く使われるようになったのか、正確な記録を見つけるのは少し難しいのですが、自転車好きたちの間でその価値が見出され、コミューターカスタムやバイクパッキングのカルチャーが成熟するにつれて、自然発生的に広まっていったように思います。

特に、日本のブランドNITTO(日東)の作る美しいフロントラックに、結束バンドやストラップでWALDの「137バスケット」を固定するスタイルは、もはや定番中の定番。この組み合わせは、見た目のバランスの良さと使い勝手の良さから、多くのサイクリストに愛されています。便利だからという理由だけでなく、自分の自転車に少しだけアメリカの風を感じさせてくれる、そんなアクセサリーとしての側面も、僕たちがWALDに惹かれる理由の一つかもしれません。

WALDを代表するプロダクト

ここで、現在も僕たちの自転車生活を豊かにしてくれる、WALDの代表的なプロダクトをいくつか紹介します。

フロントバスケット

  • 137 Front Basket おそらく最もポピュラーなモデル。大きすぎず小さすぎない絶妙なサイズ感で、日常の買い物からちょっとしたツーリングまで幅広く対応します。ラックに載せたり、付属のステーでハンドルに固定したりと、取り付けの自由度が高いのも魅力です。
  • 139 Front Basket 137バスケットより一回り大きいモデル。2つの買い物袋がすっぽり収まるほどの積載量を誇ります。大きな荷物を運ぶ機会が多い方や、バイクパッキングでより多くのギアを運びたい方におすすめです。
  • 137HB / 139HB Half Basket 人気の137や139バスケットの高さを半分にしたモデルです。「ハーフバスケット」という愛称で親しまれています。フルサイズのバスケットほどの深さは必要ないけれど、ちょっとした荷物を気軽に載せたい、というニーズに完璧に応えてくれます。浅くなったことで見た目がよりスッキリとし、ハンドル周りの視界も良好になります。バッグや箱などをストラップで固定する際のベースとしても非常に優秀で、自転車のスタイルを崩さずに積載量をアップさせたい方にぴったりの選択肢です。
  • 135 Front Basket 他のモデルと比べて深さがあるのが特徴のバスケット。荷物が飛び出しにくいため、ラフな道を走るときも安心感があります。縦長のシルエットが、自転車のスタイルにユニークなアクセントを加えてくれます。

リアバスケット

  • 582 Rear Folding Basket 使わないときはコンパクトに折りたたむことができる、リアキャリア用のバスケット。必要な時だけ展開できるので、自転車のスマートな外観を損ないません。ペアで取り付ければ、パニアバッグのように使うことも可能です。

まとめ

さて、今回はアメリカの老舗ブランド、WALDの深く、そして実直な物語をお伝えしてきました。

1905年、自動車が普及する以前の時代に産声を上げた小さな町工場が、時代の荒波を乗り越え、今なお世界中のサイクリストの「当たり前の日常」を支え続けている。この事実だけでも、胸が熱くなります。僕が特に心を打たれるのは、彼らが一貫して守り抜いてきた「実用性第一」という哲学です。

デザイナーという仕事柄、僕は常に「用の美」、つまり機能性から生まれる美しさを意識しています。WALDのバスケットは、まさにその象徴のような存在です。派手さはないけれど、そこにあるのは100年以上にわたって積み重ねられてきた信頼と、サイクリストの生活への深い理解。溶接の跡ひとつ、ワイヤーの曲がりひとつにも、「ユーザーのために」という実直な想いが込められているように感じます。

トレンドが目まぐるしく移り変わる現代において、「変わらないこと」の価値は計り知れません。僕たちがWALDのバスケットを自分の自転車に取り付けるとき、それは単に荷物を運ぶためのカゴを選んでいるだけではないのです。ケンタッキー州メイズビルの工場で、今日も変わらず働き続ける人々の誇りや、アメリカの自転車文化そのものとも言える歴史の一部を、僕たちの自転車に迎え入れている。そう考えると、日々の買い物の道のりも、週末のちょっとした冒険も、少し特別なものに感じられませんか?

この無骨で、正直で、頼りになる相棒は、きっとこれからも僕たちの自転車生活のそばで、静かに、しかし確実にその役割を果たし続けてくれることでしょう。

皆さんのWALDバスケットにまつわるエピソードや、お気に入りの使い方などがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。

それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Cr-Monicle l クロモリ自転車BLOG
Hrys Basics(ひろやす)
Hrys Basics(ひろやす)
Designer & Cr-Mo Freeks
中の人はCrust evasion乗り。最近古いMuddyFOXも仲間入りしました。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れるアラフォーのクリエイター。 自転車のあれこれやニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログにして行ってます。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
スポンサーリンク
Recommend
こんな記事も読まれています!
記事URLをコピーしました