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130年超の情熱。MAVIC(マヴィック)の揺るぎない信念と物語を紐解く 〜フランス・リヨン発、完組ホイールのパイオニア〜

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

僕のブログをいつも読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。さて、今回は、僕が製品の背景にあるストーリーモノづくりの信念に強く惹かれている、フランスの老舗ホイールブランド**MAVIC(マヴィック)**について、他のどの情報源にも負けないくらい深く掘り下げてお伝えしたいと思います。

MAVICといえば、ロードレースを彩る鮮やかなイエローのサポートカー、そして「キシリウム」「コスミック」といった名作ホイールを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、彼らが130年以上にわたり築き上げてきた歴史は、単なるパーツ製造の歴史ではありません。それは、「いかにしてサイクリストの最高のパフォーマンスを引き出すか」という、明確で揺るぎない設計思想を、常に革新的な技術で体現し続けてきた物語なのです。

デザイナーとして、僕はMAVICの製品を、単なる道具としてではなく、その背景にあるフランス・リヨンで生まれたモノづくりへの強い想いが形になったものとして捉えています。今回は、創業の経緯から、彼らがレースで貫いてきた一貫した姿勢、そして独自の技術がもたらした機能美まで、じっくりお話しさせてください。

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始まりは1889年、リヨンで生まれた「実用主義」

MAVICのルーツを辿ると、時は1889年、場所はフランス第2の都市リヨンにたどり着きます。ここは、自転車産業が急速に発展し始めた時代です。

創業したのは、シャルル・イドゥーリュシアン・シャネルの二人。社名MAVICは、彼らの名前と事業を冠したフランス語「Manufacture d’ Articles Vélocipédiques Idoux et Chanel」(イドゥーとシャネルの自転車用品製造所)の頭文字から来ています。

創業当初、彼らはリムではなく、泥除けなどの自転車部品を製造していました。しかし、彼らのモノづくりへの真摯な姿勢が、自転車界に革命を起こします。それが1934年。当時の主流だった木製リムに代わり、ジュラルミン(アルミニウム合金)製の軽量リムの開発に成功したのです。

このアルミニウムリムは、従来のリムよりも大幅に軽く、強度も高かったため、瞬く間にレースシーンで注目を集めます。そして、同年、MAVICのリムを使ったアントナン・マニューがツール・ド・フランスで総合優勝を飾ったことで、その性能は決定的なものとなりました。

この瞬間から、MAVICの「最先端の素材と技術を惜しみなく投入し、実戦でその性能を証明する」というモノづくりの信念が確立されたのです。

「黄色いサポート」に表れる、サイクリストへの一貫した姿勢

MAVICというブランドの揺るぎない姿勢を最も象徴しているのが、ロードレースで見かける鮮やかなイエローのニュートラルサポートカー、通称「MAVICカー」です。

このサポート体制は、1973年に「SSC(Special Service Course:スペシャル・サービス・コース)」として始まりました。レース中、どのチーム、どの選手であっても、機材トラブルに見舞われた際には、MAVICのスタッフが駆けつけ、スペアのホイールや機材を供給します。

これは、単なる広告塔ではありません。彼らは、「レースという最高の舞台で、すべての選手が公平に最高のパフォーマンスを発揮できる環境を提供する」という、ブランドの責任感誠実さを体現しているのです。

このSSCから得られる過酷なレース環境での実データと、プロからのフィードバックこそが、MAVICの市販製品の品質を支える土台となっています。現場で本当に求められる耐久性、操作性、そして安心感。これらを愚直に追求する彼らの姿勢は、まさに実用主義の結晶だと僕は感じています。

MAVIC独自の技術が示す「機能美」へのこだわり

MAVICの最も偉大な功績は、間違いなく**「完組ホイール」**という現代のスタンダードを確立したことです。

1994年の「COSMIC」、そして1999年の「KSYRIUM」の登場は、それまで部品の組み合わせでしかなかったホイールを、ハブ、スポーク、リムが一体で機能する**「システム」**へと進化させました。

デザイナーの視点から特に注目したいのは、彼らがアルミ素材にどれだけこだわり、機能性を追求した結果、それが美しさにつながっているかという点です。

  • FOREテクノロジー: スポークのニップル穴をリムの外周(タイヤをはめる面)に開けないことで、リムの強度を維持しつつ、チューブレス化の際にリムテープが不要になる技術です。穴が開いていないクリーンなリム内面は、無駄のない設計の美しさを感じさせます。
  • ISM(Inter Spoke Milling): リムのスポーク穴以外の部分を精密に切削加工することで、強度を保ちながら徹底的に軽量化を図る技術です。アルミリムの表面に刻まれたこの切削痕は、**「削ぎ落とすことで性能を高める」**という設計の意図が視覚化された、機能美そのものだと思います。
  • インフィニティハブ: 左右のスポーク長を均等に設計することで、スポーク張力も均一になり、完璧なホイールバランスを生み出す現代の技術です。これは、130年の歴史を持つMAVICが、いまだに**「ホイールとは何か」**を根本から問い直し続けている証拠です。

これらの技術は、単なるカタログ上のスペックではなく、「どうすれば速く、強く、快適になるか」というMAVICの一貫した設計思想が結実したものです。

MAVICを代表するプロダクトラインナップ

MAVICが長年にわたる信念を込めて世に送り出している、現在の主要プロダクトを紹介します。

ロードバイクを代表するプロダクト:究極のエアロ性能「COSMIC」

MAVICのカーボンホイールの旗艦シリーズであり、特にCOSMIC ULTIMATEは、リム、スポーク、ハブシェルまでカーボンで一体成形された、軽量性とエアロダイナミクスを極限まで追求した決戦用モデルです。NACAプロファイル(航空力学に基づく形状)による空力性能と、MAVIC独自のカーボンテクノロジーが融合しています。

ロードバイクを代表するプロダクト:アルミホイールの金字塔「KSYRIUM」

アルミホイールの代名詞として、長きにわたり愛され続けているシリーズです。KSYRIUM SL DISCは、MAVICの高度なアルミ加工技術が詰まっており、軽量でありながら非常に高い剛性を持ちます。ISMによる精密な切削痕は、機能美を好む僕らの琴線に触れるデザインであり、反応性の高いインスタントドライブ360ハブとの組み合わせで、登りも平坦もこなす万能性を誇ります。

グラベルロードを代表するプロダクト:冒険を支える信頼性「ALLROAD」

グラベルやバイクパッキングなど、舗装路から未舗装路までを楽しむライダー向けに特化したシリーズです。ALLROAD SLなどは、ワイドなリム内幅を持ち、太いタイヤ装着時の安定性を高め、長距離ライドに求められる耐久性と快適性を両立しています。MAVICが、レースだけでなく「自転車での旅」というシーンにも、その技術を注ぎ込んでいることがわかります。

マウンテンバイクを代表するプロダクト:過酷な環境への挑戦「CROSSMAX」

MTBのクロスカントリー(XC)レースからトレイルライドまでをカバーするシリーズです。特にCROSSMAX SL Sなどは、軽量性と、MTB特有の衝撃に耐える高い耐久性を兼ね備えています。これは、MAVICが初期からマウンテンバイクのリムを手掛けてきた歴史と、過酷な環境下での信頼性を最優先する実用的な設計姿勢が表れたプロダクトです。

まとめ:MAVICの「信念」が僕らを惹きつける理由

MAVICというブランドの130年を超える歴史を紐解くと、そこには「哲学」という曖昧な言葉では片付けられない、**極めて具体的で一貫した「信念」**が存在していることがわかります。

それは、創業当初のジュラルミンリム開発から、現代のカーボンホイールにおける永久保証に至るまで、

  1. 革新的な技術を投入すること。
  2. その性能をレースという最高の現場で証明し続けること。
  3. すべてのサイクリストのライドを、誠実にサポートすること。

この三つの柱で成り立っているのです。

デザイナーとして、僕はMAVICのプロダクトに、この**「実用主義」と「革新」の姿勢がもたらす、研ぎ澄まされた機能美を感じずにはいられません。彼らの技術が生み出すアルミの切削痕や、穴のないカーボンリムの完璧な形状は、「なぜ、この形であるべきなのか」**という問いに対する、最も誠実な答えだと思います。

MAVICの製品は、単に速く走るための道具ではなく、130年の歴史と、サイクリストへの深い愛情が詰まった**「物語」**そのものなのです。

皆さんがMAVICに対して持っている特別なエピソードや、次に狙っているMAVICホイールがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。

それでは、また次の記事で会いましょう!ヒロヤスでした!

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中の人はCrust evasion乗り。最近古いMuddyFOXも仲間入りしました。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れるアラフォーのクリエイター。 自転車のあれこれやニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログにして行ってます。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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