Rivendell Clem Smith Jr.に見る超ロングホイールベースがもたらす極上の安定感
こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。普段からクロモリフレームの機能美や、時代を超えて愛される自転車文化について深く考察していますが、今回は僕が長年注目し続け、乗るたびにその設計思想の深さに感銘を受ける一押しのフレームについて語ります。
今回ピックアップするのは、アメリカ・カリフォルニア州ウォールナットクリークに拠点を置くRivendell Bicycle Works(リヴェンデル・バイシクル・ワークス、以下RBW)が誇る傑作フレーム、「Clem Smith Jr.(クレム・スミス・ジュニア)」です。競技指向のロードバイクや最新の超軽量カーボンバイクとは全く異なるベクトルで、自転車としての本質的な快適性と耐久性を追求したこのフレームは、一目見たら忘れられない独創的なシルエットを持っています。その最大の秘密は、他の追随を許さない「超ロングホイールベース」と「極長のチェーンステイ」にあります。この記事では、この異彩を放つ名機が誕生した背景から、詳細なジオメトリ解析、パーツスペック、そして僕が考える最高のおすすめビルドまでを徹底的に深く解説していきます。
Clem Smith Jr.の誕生背景とGrant Petersenが込めた思想
Rivendellの創業者であるGrant Petersen(グラント・ピーターセン)は、かつてブリヂストン・USAのデザイナーとして名車を数多く世に送り出し、その後自身の美学を貫くためにRivendellを立ち上げました。彼の一貫した哲学は「レースのためではなく、人々の日常と人生に寄り添う自転車を作る」という点にあります。Rivendellといえば、ラグ成形された美しいクロモリフレームが代名詞ですが、このClem Smith Jr.は同ブランドの中でも非常に特殊で重要な立ち位置を占めています。
Clem Smith Jr.は、高価になりがちなラグ接合ではなく、TIG溶接を採用することでコストを抑え、より多くの人がRivendellの提唱する「最高の乗車体験」を手にできるように開発されたモデルです。美しい鋳造ラグを使わないからといって、妥協で作られた廉価版では断じてありません。むしろ、TIG溶接だからこそ実現できた強固な構造と、日常使いから荒れたオフロードまでへこたれない圧倒的なタフネスが備わっています。
このフレームのネーミングや開発背景には、実用車やクラシックなマウンテンバイクへの深いオマージュが込められています。様々な見解のある話題ですが、グラント・ピーターセンが過去の素晴らしい自転車のデザインを現代の解釈で再構築し、誰でも安全に、かつ楽な姿勢で遠くまで荷物を運べるように仕立て上げたのがこのモデルです。彼は「速く走るためのストレス」からサイクリストを解放し、景色を楽しみ、街を散策し、泥道を恐れずに進める自由を提供しようとしました。その思想が、極端なまでに長く取られたリヤエンドまでの造形に集約されています。
2つのフレームスタイル:L-StyleとH-Styleのデザイン美学
Clem Smith Jr.を語る上で外せないのが、「L-Style(Low top tube)」と「H-Style(High top tube)」という2つのフレーム形状の選択肢です。一般的なスポーツバイクの概念では、トップチューブが高いダイヤモンドフレームが「男性的でスポーティ」、低いステップスルーフレームは「街乗り用のママチャリ」と分類されがちですが、Rivendellはその固定観念を完全に打ち砕いています。
特にL-Styleのステップスルー形状は、 Rivendellのアイコンとも言える素晴らしい造形です。大きく下がったトップチューブは、日常で重い荷物をリアキャリアに積んだ際や、チャイルドシートを装着した際にも、足を高く上げずにスムーズにまた跨がることができます。デザイナーとしての視点で見ても、急傾斜を描くトップチューブと、後方へ優雅に伸びる超ロングチェーンステイのバランスは極めて美しく、機能美がそのままグラフィックとして完成されています。
一方のH-Styleは、伝統的なダイヤモンド形状をベースにしながらも、前方に大きく伸びたヘッドチューブと長いホイールベースによって、クラシカルなメンズバイクのような力強い存在感を放ちます。どちらのスタイルを選択しても、Rivendellが意図した「起立した快適なライディングポジション」と「圧倒的な走行安定性」は完全に共通しています。
公式サイトから読み解くサイズ別ジオメトリ表と徹底解析
Clem Smith Jr.の規格外の乗り心地を数値から証明するために、公式サイトおよび公式発表資料から抜粋したジオメトリデータを以下に示します。サイズごとに適応するホイールサイズが異なる点も、Rivendellが各身長のライダーに対して最適なハンドリングを提供するための重要な工夫です。
| フレームサイズ | 対応ホイールサイズ | シートチューブ長 (C-T) | 実質トップチューブ長 | チェーンステイ長 | ホイールベース | ヘッドチューブ角度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 45 cm | 27.5” (650B) / 26” | 450 mm | 560 mm | 525 mm | 1115 mm | 70.0° |
| 52 cm | 27.5” (650B) | 520 mm | 590 mm | 575 mm | 1170 mm | 70.5° |
| 59 cm | 29” (700C) | 590 mm | 620 mm | 625 mm | 1225 mm | 71.0° |
※上記数値は生産ロットや測定方法によって若干の個体差が生じる場合があるため、標準的な数値を抽出した数値となります。
ジオメトリがライドとビルドに与える決定的な影響
このジオメトリ表の中で、最も注目すべき箇所は間違いなく「チェーンステイ長」と「ホイールベース」です。一般的なロードバイクのチェーンステイ長が405mm〜415mm程度、グラベルバイクでも425mm〜435mm程度であるのに対し、Clem Smith Jr.は最小の45cmサイズでも525mm、最大の59cmサイズに至っては625mmという驚異的な長さを誇ります。
この超ロングチェーンステイがライドに与える影響は劇的です。第一に、後輪が乗車位置から遠く離れるため、路面からの突き上げがダイレクトにサドルへ伝わらず、まるで極上のサスペンションが入っているかのようなしなやかな乗り心地を生み出します。第二に、前後重量配分が極めて均等になるため、急な登り坂で荷物を積んでいてもフロントホイールが浮き上がることがありません。
さらに、1100mmを軽く超えるホイールベースは、高速域での圧倒的な直進安定性と、荒れた未舗装路での揺るぎない踏破性を約束します。急なハンドル操作を行ってもバイクが挙動を乱さず、常に地面に吸い付くように進む感覚は、他のどんな自転車でも味わえないClem特有の乗り味です。ビルドの面においては、リアパニアバッグを装着してもかかとがバッグに接触するストレスが完全にゼロになるため、大型のバッグを自由にマウントできるという絶大なメリットをもたらします。
Clem Smith Jr.のフレームスペック詳細と解説
続いて、Clem Smith Jr.の細部のパーツ規格・スペックをピックアップし、それぞれが持つ意味と選択の意図について深く言及します。
1. リヤエンド幅:135mm クイックリリース(QR) 現代のスポーツバイクはディスクブレーキ化に伴い142mmスルーアクスルが主流ですが、Clemはあえて伝統的な135mmQRを採用しています。これは世界中で手に入りやすいパーツで修復・維持ができるというRivendellの旅車としての思想に基づいています。135mmエンドは強度とオールドスクールなパーツ互換性のバランスが非常に優れています。
2. ブレーキ規格:Vブレーキ / カンチブレーキ台座(リムブレーキ) ディスクブレーキ全盛の現代において、Clemは強靭なVブレーキ台座を備えています。Rivendellは「シンプルな構造で、現場でメンテナンス調整が可能で、必要十分な制動力を得られる」としてリムブレーキを強く支持しています。良質なVブレーキを組み合わせることで、強力でコントロールしやすい制動力が手に入ります。
3. ヘッド規格:1-1/8インチ スレッドレス(アヘッド) Rivendellのクラシックモデルでは1インチスレッド(クイルステム)が多く使われますが、Clemはより高い剛性と堅牢性を確保するために1-1/8インチスレッドレスを採用しています。これにより、強固なフロントラックの装着や、オフロード走行時のタフなハンドリングに耐えうる堅牢なフロント周りが完成します。
4. ボトムブラケット(BB)規格:68mm BSA(ねじ込み式) 独自の異音トラブルが少ない最も信頼性の高い68mmねじ込み式BBです。市場に存在する無数のクランクセットを選択できる拡張性の高さがあり、長年の使用でもフレームのBBシェルを痛めることなく簡単にメンテナンスが可能です。
5. 巨大なタイヤクリアランス サイズに応じて2.3インチから2.6インチクラスの極太タイヤを、フルカバーフェンダー(泥よけ)を装着した状態でも呑み込む圧倒的なクリアランスを持っています。これにより、エアボリュームを活かした極上のクッション性を実現できます。
どんな人におすすめか:用途とライディングスタイル
Rivendell Clem Smith Jr.は、単にスピードを競ったり、走行距離のタイムを縮めたりしたい人には向いていません。しかし、以下のようなライフスタイルや自転車の接し方を求めている人にとっては、人生最後の相棒になり得る最高のフレームです。
まず、毎日の通勤や買い物、週末のカフェ巡りを上質でストレスフリーな時間に変えたい「エブリデイバイカー」に最適です。アップライトで快適な乗車姿勢は視界を広く保ち、街の風景を楽しみながら安全に走ることができます。
次に、キャンピングギアや大量の荷物を積んで何日も旅をする「バイクパッキング・ツーリスト」です。超ロングホイールベースのおかげで、前後キャリアに荷物を満載してもハンドリングが一切ふらつきません。重荷を積んだ状態での登坂でも安定感は抜群です。
さらに、子育て世代のサイクリストにも強くおすすめできます。リアに頑丈なチャイルドシートを取り付けても、ステップスルー形状(L-Style)のおかげで足の乗り降りが極めて容易であり、子供を乗せた状態での抜群の安定性は他のどの自転車よりも安心感をもたらしてくれます。
相性の良いパーツとヒロヤス的おすすめカスタムビルド
Clem Smith Jr.の魅力を100%引き出すために、僕がデザイナーとしての視点とクロモリ愛好家としての経験から厳選した「ヒロヤス的おすすめビルド」を具体的に提案します。クラシックな温かみと現代の実用性を融合させたコミューター兼ツーリング仕様です。
【ハンドルバー】:NITTO Bosco Bar(クロモリまたはアルミ) Clemのジオメトリを活かすには、手元に大きく手前へと引き込まれたプロムナードスタイルのハンドルが最適です。日本が誇る日東(NITTO)のBosco Barは、背筋を伸ばした楽な姿勢を作ってくれ、ゆったりとしたハンドリングを可能にします。
【ブレーキ】:PAUL Motolite V-Brake 高い切削技術と美しさを兼ね備えたPAUL Componentの最高峰Vブレーキです。抜群の制動力と調整のしやすさ、そしてクロモリフレームに映える削り出しの美しいルックスは、Clemの足回りを引き締める最高のパーツです。
【サドル】:BROOKS B17 Leather Saddle 革サドルの金字塔です。アップライトな乗車姿勢ではサドルへ荷重がかかりやすいため、幅広で使い込むほどにお尻の形に馴染むBROOKSのレザーサドルは相性抜群です。クロモリの質感とも完璧にマッチします。
【ドライブトレイン】:1×10または1×11スピード(Shimano Deoreなど) フロントはシングル(White IndustriesやSuginoの美しいクランク)にしてチェーン落ちを防ぎ、リアにワイドレンジなスプロケットを組み込むシンプルな構成がおすすめです。街乗りから激坂までトラブルなく対応できます。
【ラック・バッグ】:Nitto Front/Rear Rack + Swift Industries パニアバッグ フロントにはNittoの堅牢なラックとWALDのバスケットを配置し、日常の買い出しに対応。リアにはSwift Industriesなどの温かみのあるナイロンバッグを装着すれば、いつでも旅に出られる極上のエブリデイバイクが完成します。
まとめ
Rivendell Clem Smith Jr.は、現代の自転車業界が追及する「軽量化」「エアロダイナミクス」「剛性の追求」というトレンドとは真逆の地点にあります。しかし、そこにあるのは時代に流されない本物の快適性と、乗るたびに心が豊かになる素晴らしい体験です。
超ロングホイールベースと計算し尽くされたジオメトリが生み出す「極上の安定感」は、一度味わうと病みつきになります。日常の移動を特別な時間に変えてくれるこの特別なクロモリフレーム、皆さんはどのように組み上げて街や野山を走りたいですか?
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。皆さんの自転車選びやカスタムのインスピレーションになればとても嬉しいです。
ヒロヤスでした!

















