フレーム紹介

Fairlight Secanが提示する比例ジオメトリの衝撃。TとRの二重構造が解き放つクロモリグラベルの新たな境地

hrysbasics

こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

自転車に乗っていて、自分の身体にしっくりくるフレームサイズを見つけることは、思いのほか難しい課題です。どれほど最高品質のパイプを使い、美しい塗装が施されたクロモリフレームであっても、サイズやライディングポジションが身体に適していなければ、そのポテンシャルを100パーセント引き出すことは不可能です。特に長距離を走るグラベルロードやオールロードにおいては、数ミリ単位のフィット感のズレが、後半の疲労度や走りの爽快感に決定的な差を生み出します。

イギリス発のバイクブランドであるFairlight Cycles(フェアライト・サイクルズ)がリリースするグラベルフレーム「Secan(セカン)」は、このフィッティングの課題に対して、非常にロジカルかつ革新的なアプローチで答えを出しました。それが、彼らが提唱する「比例ジオメトリ(Proportional Geometry)」と、各フレームサイズに用意された「T(Tall)」および「R(Regular)」という二重のサイズ展開です。

今回は、Bikepacking.comなどの海外信頼メディアや公式サイトでも絶賛されているFairlight Secanの構造思想を深掘りし、なぜこのT/Rシステムが従来のフレーム選びの概念を覆す革新的なものなのか、僕自身のデザイナーとしての視点とクロモリ愛を交えて熱く解説します。

スポンサーリンク

従来のフレーム選定が抱えていた限界とスペーサー積載問題

新しいロードバイクやグラベルバイクを購入する際、僕たちはメーカーが提示するサイズ表と向き合います。通常は50、52、54、56といったトップチューブ長やシートチューブ長を基準にしたサイズ展開、あるいはS、M、Lという大まかな区分から選ぶのが一般的です。しかし、人間の体格は身長だけで単純に分類できるものではありません。同じ身長175cmのライダーであっても、足が長く胴が短い人もいれば、逆に胴が長く腕が長い人も存在します。

ここで生じるのが、ハンドルの高さ(スタック)とハンドルまでの距離(リーチ)のアンバランスです。従来のサイズ展開で足の長さに合わせてフレームサイズを選ぶと、胴が短いライダーにとってはハンドルが遠くなりすぎます。逆にハンドル位置を近くしようとして小さめのサイズを選ぶと、今度はヘッドチューブが短くなりすぎてハンドル位置が低くなりすぎます。その結果、ヘッドスパースを何枚も積み重ねてハンドルを高く引き上げるか、極端に短いステムを取り付けるという解決策を余儀なくされてきました。

コラムスペーサーを大量に積み重ねたシルエットは、クロモリフレーム特有の細身で美しく水平に伸びるパイプラインの美学を損なってしまいます。さらに、力学的な観点からも、フォークステアラーチューブに過剰な曲げ荷重がかかることや、ステム長が極端に短くなることでハンドリングのダイレクト感が損なわれるという構造上のデメリットが発生します。フィッティングとフレームの美観、そして走りのフィーリングがトレードオフの関係になっていたのが、従来のフレーム選定における大きな限界でした。

Fairlightが導き出した解法「T(Tall)」と「R(Regular)」の二重構造

Fairlight Cyclesの創業者でありデザイナーのDom Thomas(ドム・トーマス)氏は、この長年の課題に対して明確な答えを提示しました。それが「比例ジオメトリ(Proportional Geometry)」に基づく、T(Tall)とR(Regular)の2種類のフィッティングオプションです。

Secanでは、例えば「54」という基本サイズに対して、「54T(Tall)」と「54R(Regular)」の2通りのフレームジオメトリが用意されています。単に54サイズを選ぶのではなく、自身の体型や乗車スタイルに合わせてTかRを選択するシステムです。このアプローチにより、サイズラインナップは実質的に通常の2倍という極めて細やかな展開となります。

具体的にはどのような違いがあるのかを整理します。

「R(Regular)」は、平均的な体型比例を持つライダーや、比較的柔軟性が高くアグレッシブで前傾の深いライディングポジションを好むライダー向けに設計されています。ヘッドチューブが短めに設定されており、スタックが低くリーチが適度に確保されているため、ロードバイクに近いレーシーでスポーティなポジションを構築できます。

一方で「T(Tall)」は、身長に対して脚が長い(胴が短い)骨格のライダーや、体の柔軟性が控えめで、長距離走行において過度な前傾姿勢を避けたいグラベルツーリング指向のライダー向けに設計されています。ヘッドチューブ長を伸ばすことでスタックが高く設計されており、リーチはRに比べてわずかに短く微調整されています。

このTサイズが存在することで、脚が長いライダーでもスペーサーを大量に積むことなく、自然で美しいコックピット周りを構築しながら、最適なハンドル高を確保することが可能になります。見た目の美観を完全に保ちながら、身体に完璧にフィットするポジションが得られるという点において、この設計はまさに革命的です。

骨格差と乗車姿勢を解剖する。なぜスタックとリーチの独立制御が必要なのか

自転車ジオメトリの専門的な議論において、近年最も重視されている指標が「スタック(Stack)」と「リーチ(Reach)」です。スタックはボトムブラケット(BB)中心からヘッドチューブ上端中央までの垂直距離、リーチは同じくBB中心からヘッドチューブ上端中央までの水平距離を示します。

一般的な自転車メーカーのサイズラインナップでは、サイズが大きく(小→中→大)なるにつれて、スタックとリーチは一定の比例関係で斜め上に伸びていきます。しかし、人間の体の変化は必ずしもその直線的な比例関係には当てはまりません。

例えば、股下が長いライダーがサドル高を上げると、サドルはシートアングルに沿って後上方に移動します。このとき、ハンドル位置(スタック)を上げなければ、サドルとハンドルの落差(落差=サドル高−ハンドル高)が急速に広がり、激しい前傾姿勢を強いられます。かといって、ハンドルを高くするために一つ上のフレームサイズを選んでしまうと、フレームの水平方向の長さ(リーチ)まで伸びてしまい、結局ハンドルが遠すぎて手が届かないという悪循環に陥ります。

FairlightのT/Rサイズコンセプトは、まさにこの「スタックだけを高くしたい」「リーチを伸ばさずにハンドル位置を引き上げたい」というリアルな人間工学的ニーズに直球で応えています。54Rと54Tを比較した場合、スタックはTサイズの方が明確に高く設計されていますが、実効リーチの広がりは最小限に抑えられています。これにより、適切なステム長(例えば80mm〜100mmの扱いやすい範囲)を維持したまま、理想的な上半身の角度と荷重バランスを手に入れることができるのです。

Reynolds 853 Customと比例チュービング(Proportional Tubing)の融合

Fairlight Secanの優位性は、単にジオメトリの数字(T/R展開)だけに留まりません。フレーム素材の選定と、サイズごとの肉厚・外径の微調整にもその緻密な美学が貫かれています。Secanには、英国の名門パイプメーカーであるReynolds(レイノルズ)社と共同開発された、Custom Reynolds 853マンガンモリブデン鋼パイプが全面的に使用されています。

Reynolds 853は最高峰の強度を持つ熱処理鋼であり、溶接後の冷却過程で接合部の強度が向上するという空冷硬化特性を持っています。これにより、極めて薄い壁厚(肉厚)のパイプを使用することが可能となり、クロモリ特有の軽やかな弾性としなやかな乗り心地を実現します。

ここでFairlightがさらに一歩踏み込んでいるのが「比例チュービング(Proportional Tubing)」という発想です。大きなサイズ(例えば58Tや60T)のフレームに乗るライダーは、小柄なライダーに比べて体重が重く、踏み込むパワー(トルク)も大きくなる傾向があります。逆に小柄なライダーが乗る小さいサイズ(50Rや52Rなど)のフレームで太すぎるパイプを使うと、剛性が高すぎて硬く跳ねるような乗り心地になってしまいます。

様々な見解のある話題ですが、スチールフレームの乗り味を決定づけるのは素材の銘柄だけでなく、管径と肉厚のバテッド配分であると言われています。Fairlightでは、フレームのサイズやT/Rの区分ごとに、トップチューブやダウンチューブのバテッド位置(肉厚の変化点)や外径を細かくチューニングしています。これにより、体重50kg台の小柄なライダーから体重90kgを超える大柄なライダーまで、どのサイズを選んでも「Secan設計陣が意図した至高のクロモリのしなりと乗り心地」を均一に体験できるよう工夫されています。

グラベルシーンで威力を発揮するフロントエンドとトータル設計の完成度

グラベルロードであるSecanは、舗装路の軽快な巡航性能と、荒れた林道やダブルトラックでの圧倒的な安定性を兼ね備えています。その走りを支えているのが、オリジナル設計のカーボンフロントフォーク「Cempa(チェンパ)」との緻密なパッケージングです。

Cempaフォークは、Secanのフレームジオメトリと完全に調和するようにトレール値が計算されています。TサイズであってもRサイズであっても、フロントセンター長とヘッドチューブ角度の相関関係が最適化されているため、コーナリング時のハンドリングに違和感が生まれません。サイズを変えてもハンドリング特性が変わらないというのは、大量生産のフレームではなかなか真似できないクオリティです。

タイヤクリアランスについても妥協がありません。Secanは700cホイール装着時で最大45mm、650b(27.5インチ)ホイール装着時であれば最大2.0インチ(50mm)幅のタイヤを飲み込む余裕を持っています。それでいて、チェーンステー長は430mmと過度な長さを避け、ペダルを踏み込んだ瞬間のリアセンターの反応性とレスポンスの良さを維持しています。

さらに、フレーム各所に配されたボトルケージマウントや、リアラック・フェンダー用の隠しダボ穴、ダイナモライト用インナールーティング(内蔵工作)など、バイクパッキングや長距離ツーリングを意識した実用的なディテールが隙なく配置されています。美しい佇まいでありながら、過酷な冒険に耐えうる頑丈さと多用途性を備えているのです。

デザイナー視点で読み解くFairlight Secanの機能美と合理性

普段デザイナーとしてプロダクトや造形に向き合っている僕の視点から見ても、Fairlight Secanの造形美と合理性の融合には深く感銘を受けます。

自転車のデザインにおいて「美しさ」とは、単に装飾やカラーリングのことではありません。構造と機能が無理なく洗練され、不必要な無駄や歪みが削ぎ落とされたときに立ち現れる必然的な佇まいこそが、プロダクトの美しさだと僕は考えています。

従来のフレームでは、サイズを無理に合わせようとした結果、コラム部分にスペーサーが城のように高く積み上がったり、シートポストが数センチしか出ずにアンバランスに見えたりするケースが頻発していました。しかし、SecanのT/Rシステムを採用することで、どんな骨格のライダーであっても、まるでビスポーク(フルオーダー)で作られたかのような「理想的なプロポーション」でバイクを組み上げることができます。

ステムはアヘッドコラムに対してすっきりと収まり、適正なシートポスト長が露出してクロモリのホリゾンタル〜緩やかなスローピングラインが綺麗に描かれます。さらに、独自設計の3Dプリント製ケーブルガイドや、精密に切削されたリアエンド周辺のドロップアウト造形など、細部のディテールに至るまで機能的でありながら視覚的な満足感を満たしてくれます。形態は機能に従うというデザインの真理を、自転車フレームという形で極限まで高めた傑作と言えます。

自分に合ったSecanを選ぶための思考プロセスとフィッティングの実際

では、もし実際にFairlight Secanを手に入れようとする場合、僕たちはどのようにして自分に最適なサイズ(例えば54Rなのか54Tなのか)を見極めれば良いのでしょうか。

Fairlight Cyclesの公式サイトでは、「Fit Finder(フィットファインダー)」と呼ばれる非常に緻密なフィッティングガイドが公開されています。これは、現在乗っている自転車のサドル高(BB中心からサドル上面まで)と、サドル先端からハンドル中心までの距離、サドルとハンドルの落差を入力することで、どのT/Rサイズが最も適しているかを算出してくれるシステムです。

フィッティング選定の基本的な思考プロセスは以下の通りです。

まず第一に、自分のサドル高を確定させます。サドル高が決まると、その位置からどの程度のハンドル高(スタック)を求めるかが次の基準になります。

もし、サドルとハンドルの落差を大きめに取り、風抵抗を減らしたアグレッシブな走りをしたい、あるいは上半身の柔軟性が十分にあり深い前傾姿勢が得意だという場合は「R(Regular)」サイズが第一候補になります。

逆に、サドルとハンドルの落差を小さく抑えたい、舗装路だけでなく荒れたオフロード走行時に体を起こして視界を広く保ちたい、または長時間のツーリングで腰や首への負担を減らしたいという場合は「T(Tall)」サイズが最適な選択となります。

諸説ある話ですが、グラベルライドにおいてはロードバイクよりもスタックをやや高め(10mm〜20mm程度アップ)に設定した方が、下り坂や未舗装路での車体コントロール性が劇的に向上すると言われています。自分の普段の走行環境やライドスタイルと向き合い、最適な一台を選び出す時間そのものが、自転車好きにとって至福の体験です。

まとめ:比例ジオメトリが切り拓くクロモリバイクの未来

Fairlight Cyclesの「Secan」が示した比例ジオメトリとT/Rサイズコンセプトは、単なる一メーカーの珍しいサイズ設定という枠を超え、現代のプレミアム・スチールバイクが目指すべき新しい標準を示してくれました。

大量生産の効率性を優先し、S・M・Lの3サイズだけに集約していく大手ブランドが増える中で、生産コストや在庫リスクを恐れず、ライダー一人ひとりの体格と姿勢に真摯に向き合うFairlightのモノづくり精神には頭が下がります。

クロモリという伝統的で温かみのある素材を用いながら、設計思想はどこまでも最新の人間工学と力学に基づいている。Secanは、温故知新を体現する最高峰のグラベルフレームであり、僕たちが自転車に求める「完璧なフィット感」「走りの心地よさ」「所有する美しさ」をすべて高い次元で満たしてくれます。

もしみなさんも、今の愛車のフィッティングやポジションに少しでも違和感を抱えていたり、次に迎える一生モノのクロモリフレームを探しているなら、ぜひFairlightの比例ジオメトリという革新的な思想に触れてみてください。自分の身体と完全に一つになるような極上の乗り味が、きっとそこには待っています。

みなさんは、自分の身体に完璧にフィットするフレームに出会えた時の感動を味わったことがありますか?ぜひコメントなどでみなさんのポジションに関するこだわりや、フレーム選びの体験談を教えてもらえると嬉しいです!

今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

ヒロヤスでした!

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

Cr-Monicle l クロモリ自転車BLOG
Hrys Basics(ひろやす)
Hrys Basics(ひろやす)
Designer & Cr-Mo Freeks
中の人はCrust evasion乗り。最近古いMuddyFOXも仲間入りしました。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れるアラフォーのクリエイター。 自転車のあれこれやニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログにして行ってます。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
スポンサーリンク
記事URLをコピーしました