チェーンってどれも同じ?自転車屋よりも詳しくなるチェーン講座

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こんにちは、ヒロヤスです。大阪の街を今日も自転車で駆け抜けているアラフォー、デザイナーの僕です。

前回の記事で、クロモリフレームの自転車が僕に「スピードからの解放」という新しい価値観をもたらしてくれた、という話をしました。その流れで、僕のカスタムや自転車への向き合い方に大きな影響を与えたパーツがあります。

それは、チェーン。

サイクリングカルチャーを少しでも深く知っている人なら、彼らがチェーンを単なる駆動パーツとして扱っていないことに気づいているかもしれません。チェーンは、ペダルを回す力を後輪に伝える、シンプルでいて最も重要な役割を担う存在です。しかし、その奥深さを知る人は、案外少ないのではないでしょうか。

今回は、そんな僕が日々のライドやパーツいじりから見えてきた、チェーンという存在の魅力と、その選び方について語ってみたいと思います。これを読めば、あなたの自転車の見方も少し変わるはずです。

1. チェーンって、どれも同じ?値段の裏に隠された真実

自転車のチェーンは、驚くほど価格帯が幅広い。千円でお釣りが来るものから、数万円する高級品まであります。この価格差は、見えない部分にこそ隠されています。

1-1. 素材と製造精度:チェーンの命を握る要素

チェーンの性能は、使われている素材と製造精度によって決まります。安価なチェーンには、一般的なスチールが使われることが多いですが、高級チェーンは、強度と軽量化を両立させるために特殊な高強度スチール合金を採用しています。

さらに重要なのが製造精度です。チェーンは、アウタープレート、インナープレート、ピン、ローラー、ブッシュといった多数のパーツで構成されています。これらのパーツは、それぞれがスムーズに動くことで、ペダルの力を効率良く後輪に伝えます。高級チェーンは、各パーツの公差がミクロン単位で管理されており、摩擦が極限まで少なくなるように設計されています。この精度の高さが、滑らかなペダリングと静粛性を生み出しています。

1-2. 表面処理:摩擦と摩耗に抗う技術

チェーンは常にパーツ同士が擦れ合い、摩耗しています。この摩耗を遅らせるために、高級チェーンには様々な表面処理が施されています。

  • ニッケルメッキやクロムメッキ: 一般的なチェーンにも見られる処理で、主に錆を防ぐ目的で施されます。
  • TiN(チタン窒化膜)コーティング: 金色に輝くチェーンの正体です。チタンと窒素の化合物で、非常に硬度が高い。見た目が美しいだけでなく、摩耗に強く、滑りも良くなるため、駆動抵抗が軽減されます。
  • DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング: まるでダイヤモンドのような硬質で滑らかな膜を形成する技術です。黒く美しいマットな質感は、バイク全体を引き締める効果もあります。摩擦係数が非常に低く、最高の耐摩耗性を誇ります。僕のクロモリバイクにも、いつかこのDLCコーティングのチェーンを着けてみたいと密かに思っています。

このような特殊な表面処理は、チェーン自体の寿命を延ばすだけでなく、チェーンリングやスプロケットといった他の駆動系パーツの摩耗も防いでくれます。結果的に、ランニングコストを抑えることにもつながります。

1-3. 「チェーンの伸び」という誤解と耐久性の真実

自転車乗りの間でよく言われる「チェーンが伸びた」という言葉。しかし、チェーンの金属自体が物理的に伸びるわけではありません。これは、チェーンを構成するピンとローラー、ブッシュなどの摩耗によって、パーツ間の隙間が広がる現象です。

この摩耗は、チェーンを使い続けることで必ず起こります。そして、摩耗して間隔が広がったチェーンを使い続けると、チェーンリングやスプロケットの歯とのかみ合わせが悪くなり、ギアの摩耗を急速に進めてしまいます。

高級チェーンは、耐摩耗性の高い素材やコーティングが施されているため、この「伸び」が遅いです。つまり、交換頻度が少なく済みます。チェーンの価格だけを見ると高く感じるかもしれませんが、スプロケットやチェーンリングの交換費用まで考慮すれば、むしろ安価なチェーンを頻繁に交換するよりも経済的であることも多いです。

1-4. 変速性能:多段化が生んだ技術の結晶

ロードバイクやマウンテンバイクの多段変速用チェーンは、単純に力を伝えるだけではありません。スムーズで確実な変速を可能にするために、プレートの形状が複雑に設計されています。

シマノの「Hyperglide+」テクノロジーは、チェーンプレートの内側と外側に特別な形状を持たせることで、ペダルに力をかけた状態でもスムーズなギアチェンジを可能にしています。これにより、坂道でも失速することなく変速できます。また、スラムの「FlatTop™」は、プレートの上部を平らにすることでチェーンの幅を狭め、12速化に対応しながらも強度を維持しています。これらの技術は、コンポーネントメーカーの飽くなき探求心が生んだ結晶と言えるでしょう。

2. 有名メーカーとモデル解説:僕が愛するクロモリフレームに似合うチェーンは?

僕のクロモリフレームに似合うチェーンはなんでしょうか。性能はもちろん、佇まいも大事にしたいです。ここでは、主要なメーカーとその哲学、代表的なモデルをいくつか紹介したいと思います。

2-1. 和泉チエン(IZUMI):MADE IN JAPANの誇り

IZUMIは、僕の地元大阪が誇る、創業100年以上の歴史を持つ老舗チェーンメーカーです。特に、シングルスピードの世界、特に競輪やトラック競技の世界では、その品質は伝説となっています。

  • IZUMIの哲学: IZUMIのチェーンは、職人の手によって一つ一つ丁寧に作られています。彼らの哲学は「最高のパフォーマンスを追求する」こと。競輪という、わずかな差が勝敗を分ける世界で、選手たちの信頼を長年勝ち取ってきたことが、その品質の証です。
  • NJS認定: 日本の競輪で使われる自転車のパーツには、NJS(日本自転車競技連盟)の厳しい審査をクリアした「NJS認定品」しか使用できません。IZUMIのチェーンは、このNJS認定品を多数輩出しており、これは日本が誇る最高品質の証です。
  • 主なモデル:
    • IZUMI V: 競輪選手の足元を支え続けてきた、言わずと知れた名品です。耐摩耗性が非常に高く、その信頼性からストリートのピストユーザーにも絶大な人気を誇ります。
    • IZUMI SUPER TOUGHNESS KAI: 東京2020オリンピックに向けて、アメリカのナショナルチームと共同開発された最高級モデルです。特殊な表面コーティングにより、IZUMI-Vと比較して駆動抵抗をさらに10%削減しているとされています。

2-2. シマノ(SHIMANO):世界のスタンダードを創る

シマノは、変速機やブレーキなど、自転車コンポーネントの分野で世界をリードしてきたメーカーです。そのチェーンも、コンポーネントシステム全体の一部として、完璧な変速性能を追求して設計されています。

  • シマノの哲学: 「システムの最適化」。シマノのコンポーネントは、チェーン、スプロケット、チェーンリング、ディレイラー、シフターのすべてが完璧に連携するように設計されています。その中核をなすのがチェーンです。
  • 主なモデル:
    • DURA-ACE / XTRシリーズ: シマノのロードとMTBの最高峰グレードです。軽量化のために中空ピンを採用したり、プレートに肉抜きを施したりと、最高のパフォーマンスを追求しています。
    • ULTEGRA / DEORE XTシリーズ: DURA-ACEやXTRの技術を継承しながら、高い性能と耐久性を両立させたモデルです。ホビーライダーが選ぶなら、このグレードが最もバランスが取れています。
    • 105 / SLXシリーズ: より手の届きやすい価格帯でありながら、上位グレードの設計思想を受け継いでいます。僕の通勤用ロードバイクにも、このあたりのグレードのチェーンを使っています。耐久性も高く、日常使いには申し分ありません。

2-3. KMC:軽さとカラーで個性を出す

KMCは、幅広いラインナップと豊富なカラーバリエーションで知られる台湾のチェーン専門メーカーです。

  • KMCの哲学: 「多様なニーズに応える」。KMCは、レース用の超軽量モデルから、街乗り用のカラフルなモデルまで、あらゆるライダーのニーズに応える製品を提供しています。
  • 主なモデル:
    • X11SL DLC: DLCコーティングと中空ピンを採用した、11速用の超軽量チェーンです。ヒルクライマーや、バイクの軽量化にこだわるライダーに絶大な人気があります。
    • Z-Series: シングルスピード用のリーズナブルなチェーンです。価格が手頃な上に、ブラック、ゴールド、レッドなど、様々なカラーが用意されているため、カスタマイズの幅が広がります。

2-4. スラム(SRAM):独自のテクノロジーを突き詰める

スラムは、独自の変速システムを開発することで、シマノとは異なるアプローチで市場を切り開いてきたアメリカのメーカーです。

  • スラムの哲学: 「シンプルで革新的な技術」。独自の1x(ワンバイ)システムや、ワイヤレス変速システム「eTap AXS」など、常識にとらわれない製品を開発しています。
  • 主なモデル:
    • RED eTap AXSチェーン: スラムの最高峰ロードコンポーネント「RED eTap AXS」に最適化されたチェーンです。「FlatTop™」テクノロジーにより、細身ながら高い強度を誇り、変速性能と静粛性にも優れています。

3. 僕なりのチェーン選びのヒントとまとめ

ここまで色々なチェーンを見てきましたが、結局どのチェーンを選べばいいのでしょうか。僕なりの考えをいくつかまとめてみました。

  1. 用途とスタイル: 変速機付きのロードバイクやMTBに乗るなら、基本的にはシマノやスラムといったコンポーネントメーカーの製品を選ぶのが一番確実です。システムの互換性や性能を最大限に引き出すことができます。一方、僕が好きなクロモリのピストやシングルスピードバイクに乗るなら、IZUMIやKMCといったチェーン専門メーカーの製品がおすすめです。特にIZUMIは、職人技が光るメイドインジャパンの品質を肌で感じることができます。
  2. 予算とランニングコスト: 初期投資は高くなりますが、高級チェーンは耐久性が高く、結果的にスプロケットやチェーンリングの寿命を延ばしてくれます。長い目で見れば、安価なチェーンを頻繁に交換するよりも、トータルのコストは抑えられます。
  3. メンテナンスは必須: どんなに高価なチェーンでも、メンテナンスを怠ればすぐに性能は落ちてしまいます。チェーンクリーナーで定期的に汚れを落とし、適切なチェーンオイルを注す。これだけでチェーンの寿命が格段に延び、自転車の性能を維持できます。

チェーンは、目立たないけど、自転車の性能を大きく左右する重要なパーツです。

この記事が、あなたの自転車ライフをより豊かにするヒントになれば幸いです。

もしあなたがこだわりのチェーンを使っているなら、ぜひコメントで教えてほしい。みんなでチェーンの奥深さを語り合いましょう。

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Hrys Basics(ひろやす)
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Designer & Cr-Mo Freeks
中の人はCrust evasion乗り。クロモリ自転車とデザイン・作品制作に明け暮れる30第半ばのクリエイター。 海外の自転車ニュースやいろいろなフレーム・パーツがとても気になり、あれこれ見て調べてってやるならそれをまとめて見よう、ということでこのブログを解説しました。 飽き性が出ないよう根気よく続けていこうと思います。
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